亘

ベティ・ブルー/インテグラル 完全版の亘のレビュー・感想・評価

3.7
【2人だけの幸せを求めて】
南フランスの海辺。ゾルグとベティはコテージに暮らしていた。雑用で生計を立てる真面目なゾルグに対してベティは活発で少々感情的。パリに移りレストラン、ピアノ店と職を変えながら2人は愛し合い続ける。

ゾルグとベティのラブラブなカップルの日常を描いた作品。ベティは可愛くてセクシー、ただ時々感情的になってしまって暴れてしまう。彼女が暴れるところだけ見ればメンヘラとか重いとかいわれるかもしれない。でもベティは単に自分の想いや感情に正直なだけで、ゾルグへの愛は誰よりも深い。彼女にとってはゾルグこそ世界一で誰よりも優れているし、彼女の一番の願いは彼と2人で幸せに暮らすこと。この作品をずっと見ることで単なるメンヘラではないベティの想いも伝わってくると思う。そして激しい彼女を優しく愛し時には制止するゾルグも印象的。

ゾルグとベティは海辺のコテージで毎晩セックスをするくらい深く愛し合ってるカップル。2人は基本的にいつも一緒でゾルグの仕事にベティがついてくることもしばしば。ある日ゾルグが頼まれたペンキ塗りの仕事を2人でやるも仕事量が多すぎることにベティが腹を立て途中放棄、上司の車にペンキをぶちまける。家主が家を訪れた時には家主を家から落とし家に火を放つ。まさにベティの行動でゾルグの人生は大きく変わったのだ。

2人はベティの友人を頼ってパリへ行く。2人はまずレストランで働き始める。しかしここでもベティが気に入らない客にキレたために仕事が続かなくなる。この時期ベティはゾルグの小説を出版社に送るためにタイプを始める。この小説自体ゾルグが趣味で書いたものだしゾルグは隠していたもの。だけどベティは小説をべた褒めしタイプなんてしたことないのにタイプを始めるのだ。これもまさにベティの愛の力だろう。そして毎日毎日出版決定の手紙を待ち続けるのだ。ただある出版社から酷評する手紙を受けたことで彼女は復讐をしに行く。ベティからすればゾルグがけなされるのが我慢ならなかったのだろう。

その後の2人の転機は、ピアノ店の開業。友人エディの母が亡くなったことから、そのピアノ店を引き継ぎ2人で営業し始めるのだ。田舎町で近所のボブとも協力しながら仲良くなるし穏やかに暮らせるかに思えた。しかしベティは突然ガラス窓を割ったり叫びながら逃げたりどこかおかしい。もしかしたら環境の変化とかあるのかもしれないけど、その後の不幸の前兆のようでもあった。

ある日彼女は妊娠検査薬で陽性が出たとしてゾルグに嬉々として報告する。もしかしたらここが彼女の幸せのピークだったのかもしれない。その後検査で陰性だと分かると彼女は坂を転げ落ちるように荒れ始める。泣き続けて顔が崩れたり幻聴が聞こえたり果てには子供を誘拐したり、それまでにはない荒れ方だったしそれだけショックだったのだろう。そしてついに彼女は自宅で右目をえぐる。ゾルグが小説出版を話せないし、ベッドに固定されてしまう。ゾルグは動かない彼女が居たたまれなくなって彼女を窒息死させ彼女の遺志を継いで小説執筆を始める。彼としてはそれまで執筆に気乗りしなかったけど、ベティの思いを実現したかったのだろう。ラストシーン、ベティの声をした猫とゾルグが会話をする。これもベティを想うゾルグの気持ちの表れだったように思う。

印象に残ったシーン:ベティとゾルグがペンキ塗り中に記念写真を取るシーン。ゾルグがキレるベティを制止するシーン。ベティが妊娠陰性だと分かり荒れるシーン。ゾルグと猫が会話するラストシーン。
亘