シネフィルmonk

10ミニッツ・オールダー イデアの森のシネフィルmonkのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

『10ミニッツ・オールダー』で「イデアの森」と邦題のついたもう一つのDVDでは、8人の巨匠の中で時間軸の不思議な謎に誂んだのは2人。

ベルトルッチの 「水の寓話」は、インドの寓話をもとにしたショート。インドからの難民としてイタリアに辿り着いた男は仲間から「水が欲しい」と頼まれ、探しているうちに地元の娘と知り合い、結ばれる。そして家族もできドライブに出かけると、いつまでも水を待っている老人の姿がそこにあった。

『イル・ポスティーノ』(1994🇮🇹🇫🇷)の作品で知られるマイケル・ラドフォードの短編「星に魅せられて」は、80光年のタイムトラベルから帰還した宇宙飛行士が地球に帰還したら様子も変わっていて、ロボットの女性が迎えに来てくれたり、息子も既に年老いていたという近未来のSFストーリー。主演は007に起用される前のダニエル・クレイグが若い。

15人の名だたる巨匠の中で最も異彩を放つのは、やはりヌーヴェル・ヴァーグの旗手で、映画の革命家ジャン=リュック・ゴダール「時間の闇の中で」。

ゴダールは限られた10分間で1分の映画を10話作る発想で、ジャン=ピエール・レオを起用した『メイド・イン・USA』(1966年)やピエル・パオロ・パゾリーニ監督の『奇跡の丘』(1964年)などの作品や、アウシュビッツ映像などを交えて「愛」「歴史」「静寂」「恐怖」「永遠」等、10のエピソードの”最後の瞬間”から時間の闇=映画こそが「永遠」というメッセージを残す。愛妻であったアンナ・カリーナが娼婦ナナを演じた『女と男のいる舗道』(1962年)の涙シーンが懐しい。

ほかの作品も、1人の老優の人生を若い頃から凝縮して見せたイジー・メンツェル、唯一の女性監督のクレール・ドニの列車内のインタビューを取り上げた「ジャン=リュック・ナンシーとの対話』など、多彩なショート・ストーリーが楽しめました。
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