とらキチ

座頭市物語のとらキチのレビュー・感想・評価

座頭市物語(1962年製作の映画)
-
「午前十時の映画祭11」にて鑑賞。
「サマーフィルムにのって」で主人公の女子高生ハダシが心揺さぶられ虜になり、その愛を語っていたのが今作。
序盤、市が草履を脱いで、子分達の丁半博打で金を巻き上げるくだりが、とても落語的で面白い。そのまま斬り合いになるのかと思いきや…まだいかない。市が、その居合術を実際に見せるのは実に物語の3分の1以上過ぎてから。よくある普通の構成なら、ここで掴みとばかりの斬り合いで市の能力を見せるだろうけど、勝新の佇まいだけでそれを充分に感じさせているのがスゴイ。
そんな勝新の佇まいを見ているだけでコチラも充分に満足しちゃうのだけど、脇を固める役者達の面構えを見るのも楽しい。こんな味のあるイイ顔した脇の役者も少なくなった。そんな中、ヒロイン役である万里昌代さんが、とても現代的な顔立ちで美しい。
市と不思議な友情を感じ合う労咳病みの浪人・平手造酒役の天知茂。若い!自分の知ってる天知茂といえば、やっぱり土曜ワイド劇場“明智小五郎”の苦み走ったニヒルで、顔をペリペリ剥がすイメージがあるので、ある意味ピュアな武士である平手造酒は新鮮。また“労咳病み”っていうのが、いかにも時代劇っぽいんですよね。喀血したり。勝新が按摩として、天知茂の身体を揉もうとする、その時勝新がセリフで「ちょいと掴まらせていただきます」って言うんですけど、コレがシビレる!こんな言い回し、現代では絶対出てこない!こんなところからも、昔の時代劇や落語、講談って観る価値があると思う。
そんな2人の決着のつき方も目にも留まらぬ早業でつき、儚く切ない。作中、あの2人だけ居る次元が違っていた。そして最後親分を叱りつけ啖呵切るところ、そこだけ勝新の目がカッ!と開くのがメチャクチャカッコ良くて、ゾクゾクした!
黒澤明の「用心棒」プロットみたいに両陣営をあちこち掻き混ぜる訳では無いけど、博徒任侠組織内での立場の在り方等、通底に流れるテーマとしては現代に通じるモノを感じた。後期座頭市シリーズは、イコール勝新色が強すぎるので、前期座頭市シリーズ、続編を観てみたいと思いました!
とらキチ

とらキチ