ずどこんちょ

エレファント・マンのずどこんちょのレビュー・感想・評価

エレファント・マン(1980年製作の映画)
3.7
奇形で生まれた19世紀の実在の青年ジョゼフ・メリックの半生をモデルに描いたドラマ。
1980年公開の映画ですが、あえてモノクロにしたことで19世紀当時の雰囲気が感じられます。また、序盤のエレファント・マンが登場するあたりはモノクロだったことで1920年代から50年代のユニバーサル・モンスター映画を彷彿とさせる不安な感じ。

一瞬ホラーに見せつつ、障害を抱えた男のドラマが展開されていくのは、観客である私自身も彼のことを偏見の目で見ていた事実を見事に突きつけられたのかもしれません。
最終的にジョンに対して不安を感じていた序盤の自分を恥じてしまいます。反省。

現代でも意思疎通のできない障害者を排除しようという、幼稚で短絡的で身勝手な理由で戦後最悪とも言える凶悪殺人に踏み込んだ犯罪者がいましたが、
あれはこの映画でジョンの病室を勝手に見世物小屋にして「お前が化け物だ!」と言われていた男の遥か先の延長線上にいる犯罪者だと分かります。
自分の腐って歪んだ価値観を優先して、他人を平気で傷つけるヒトではない化け物。

見た目だけで化け物として偏見の目に晒されるジョンが駅の構内で追いかけてくる人々に対して、終盤で叫んだ言葉が胸に響きます。
この映画を見る限り、ジョンよりも彼を怖いもの見たさで見にくる冷たい群衆の方がよっぽど化け物じみていました。