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水俣 患者さんとその世界のあんずのレビュー・感想・評価

水俣 患者さんとその世界(1971年製作の映画)
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『水俣曼荼羅』で水俣病に興味を持ち、原監督が土本監督からのバトンを受け継いで撮ったとおっしゃっていたので、土本監督作品も観なければ、と気合いを入れて行ったのだけれど……方言と多分、昔の言い回しということもあり、私には何を言っているのかよく分からない所が多々あり、残念だった。それ故、寝てしまった所もあったので、スコアはつけず。

けれど、映像の力はとてつもなくすごくて、特にチッソの株主総会に患者さんやそのご家族が株を買って乗り込み、お経を唱えながら社長に詰め寄るシーンは、衝撃の映像だった。人間の尊厳を懸けた戦い、文字通り命を懸けた戦いで、人間の強さと誇り高さ(患者さん側)と人間の狡猾さと汚さ(チッソの社長や役員ら)をはっきりと映像に収めていた。

水俣の人たちを支援しようと募金活動をする団体の代表の言葉が胸に染みた。豊かさと引き換えに私たちは大切なものを犠牲にして来たのではないか、ということ。芋の茎を食べてでも戦争を生き延びて、命の大切さを誰もが知っている国で、経済成長のために市民が犠牲になってもいいのかというようなことだったと記憶している。この映画の公開から約50年。水俣病もまだ全然終わっていないし、日本も世界も命を大切にしているだろうか。
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