ハートブレイカー

ジョジョの奇妙な冒険 ファントム ブラッドのハートブレイカーのネタバレレビュー・内容・結末

2.9

このレビューはネタバレを含みます

ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド
2007年2月17日公開。


ジョジョに関する文章にはいつも巧妙なジョジョネタを混ぜ込む癖がありますが、今回は普通の文体で記すことにします。

数年前までジョジョ関係商品のデザイナーとして働き、集英社からも「ジョジョ知識がものすごい人」と言われ、さらに作者の荒木先生の奥様からも「あなた本物だわッ!」のお墨付きとサインを頂き、一緒に写真まで撮らせて頂いた、自称世界最強のジョジョヲタの自分は、この映画公開時は大学生でしたが当然のように公開日に即刻見に行き、今では希少な劇場前売り券付属の石仮面ストラップ&映画パンフレットも持っています。


本作は過去に3部のOVAを制作したスタッフが再び結集して制作されたわけですが、上記のように生粋のジョジョヲタである自分にとっては、かなり複雑な気持ちになる作品でした。

まず、今ではTVアニメの効果もあり様々なグッズなども出ておりライト層も獲得していますが、当時は一般人は食わず嫌いをし、コアなファンが付いているような作品でだったので、そもそも劇場映画化、しかも3部ではなく1部!という時点でビッグニュースでした。
ジョナサンやディオに声がアテられ、喋って動いているというだけで感動だったのです。

いざ公開となり、公開日に即見に行ったのですが、劇場はガラガラで、10~15人程度しか入っていなかった記憶があります。(8~9割男性)
前述の通り、今ほど一般大衆に支持されていた作品ではなかったので、ガラガラだった点に関しては「まぁこんなもんだろな」くらいにしか思いませんでした。

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前置きが長くなりましたが、ここから本編のレビューです。

冒頭はアステカの部族ではなく、若いツェペリさんが波紋の修行で、老師トンペティに自分の死期に関する予言を受ける所から始まります。
この改変に関しては、自分は肯定的です。90分の映画の中で、後に起こる事の予言から始めることで、グイグイ物語に引き込まれる効果がありました。トンペティの波紋で空の雲が円形に晴れていく演出にはやり過ぎ感は否めませんでしたが。

その後でしっかりと馬車事故、ジョナサンとディオの出会いなどなど、1部の始めと同じように展開していきます。
荒木先生のオーダーで、ジョナサンの幼少期のイジメをしっかり描いてほしいと言われていたそうで、90分の本編の中で、かなりの尺をそこに費やし、戦いの部分はかなり端折ったような印象でした。
しかし、ディオの陰湿さの裏にある彼の動機(ジョナサンをフヌケ人間にし、ジョースター家の財産を乗っ取る)が正しく描かれていない為、ただの意地悪野郎に成り下がってしまっていました。

また、尺の都合でスピードワゴン・ダイアー・ストレイツォの存在が消え、さらにタルカスとブラフォードがチョイ役(※後述)になってしまっています。
さらに、ジョジョの話を人とする時に必ず話題に上がるような超有名セリフがいくつもカットされていたり、同様の趣旨のセリフがあるのに微妙に違う言い回しになっていたりと、終始もやもやもやもやさせられました。
(※さすがディオ!俺たちに~~、君が泣くまで殴るのを~~、お前は今まで食ったパンの枚数を~~、はなせジョジョ~こいつ死んでいる、などがカットで、「震えるぞハート!燃え尽きるほどヒート!」の後の「刻むぞ血液のビート」だけカットなど)

前述の冒頭部分の演出、ズキュウゥゥンのキスシーンではディオとエリナの周りをカメラがグルグル回る演出など、凝った作りの部分が多くあり、割りと好意的に見ていました。
しかし、いくら演出に凝っていても脚本がまるでダメなので、後半はとにかく絶句です。
ウィンドナイツ・ロットにて、ディオが手を挙げるとどういうワケか地面が地鳴りを上げ、塔が生えてくる。このシーンの隅の方に、チラチラと見覚えのある姿が・・・タルカス&ブラフォードが数秒間出演。タルカスがチョイ役の為、超重要であるはずの双首龍の間チェーン首輪デスマッチが丸々カット。塔と一緒に地面から生えてきた大きなトゲのようなものがツェペリさんの腹部を貫通・切断し、ツェペリさんが死亡。思い出すだけでゲッソリします。
最後に、3部に繋がる目配せシーンがあるのですが、OVAにはスピードワゴン財団が登場しているのにスピードワゴンがいない1部を3部に繋げようとでも言うんですかね・・・

しかし、見終わった直後、もやもやはありつつも、『劇場でジョジョを見た』という事実だけで嬉しくて高揚した気分で帰れたので、結果的には映画化して良かったのだと思います。


作画に関しては、OVAのスタッフである為、荒木先生の絵柄とは似ても似つかないような画ですが、3部のOVAと同じ絵柄なので慣れもあり、すんなり受け入れられました。(でも全キャラロンパリは勘弁してほしいです)
しかし、愛犬ダニーの犬種が変わっており、耳がダランと垂れているという全く無意味な改変には正直イラつきました。
波紋のエフェクトが金色に輝く所は太陽のエネルギーっぽくてとてもカッコ良いですが、気化冷凍法が凍ったような色に変化しないので冷凍感がないのが残念。
さらに、劇場公開時のポスターやパンフレットの表紙の絵が、荒木先生の絵でもなく、アニメ本編の絵でもなく、さらにジョナサンがジョセフのポーズをとっていたりなど、ものすごく微妙なクオリティなのも大いに残念です。

声優の知識はほぼないのですが、ディオ(DIO)は昨今のアニメ・ゲームの子安氏よりも、緑川氏の方が何倍も合っていて良いと思います。
(CAPCOMの3部の格闘ゲームの千葉氏のDIOこそが至高ですが・・・)


主題歌、SOUL'd OUTの『VOODOO KINGDOM』はディオ目線で見た1部をよく表した曲でカッコイイです。


公開から8年以上経った2015年現在、本作はソフト化していません。
3部OVAにおいてイスラム教のコーランが不適切に扱われ、販売停止措置などの問題に発展した事が原因と言われていますが、噂では荒木先生の激怒が直接の原因ではないかと言われています。

後半でゲッソリする映画であっても、やはり生粋のファンとしてはもう一度見たいし、ソフト化してほしいと心の底から思っています。