ハートブレイカー

ブラック・ウィドウのハートブレイカーのネタバレレビュー・内容・結末

ブラック・ウィドウ(2021年製作の映画)
2.9

このレビューはネタバレを含みます

邦題:ブラック・ウィドウ
原題:Black Widow



コロナのせいで1年以上公開延期されていたが、遂にMCUの新作映画が戻って来たッ!!

トレーラーを最初に見た時、タスクマスターの正体はメリーナ(レイチェル・ワイズ)ではないかと予測した。
そもそも、タスクマスターというヴィランは『トニー・マスターズ』という男なのだが、トレーラーの時点でアーマーで盛っていてもヒョロヒョロな肉体である事からすぐに女だと気付き、そして正体が誰なのかが物語的に重要になると思い、マスクを外した時に意外性を感じられるキャラクターに=仲間だと思っていたメリーナが実は悪者という展開では?と推測した。

結果的にはメリーナではなかったが、ナターシャが早々に「ドレイコフの娘」の件を悔やんでいると示された時に「じゃあ実は生きていたドレイコフの娘がタスクマスターだな」と即座に気付いてしまった。




【良い点】
●子供の頃のナターシャを演じたエヴァ・アンダーソン(ミラ・ジョボビッチとポール・W・S・アンダーソンの娘)がスカーレット・ヨハンソンに似ていて良い。

●アベンジャーズ(2012)にて、捉えたロキを尋問する際に「ドレイコフの娘・サンパウロ・病院の火事」と言われる。
また、NY決戦にてクリントとの会話で、「ブダペストを思い出すわね!」「君と俺じゃ違う思い出だけどな」という会話がある。
アベンジャーズ:エンドゲーム(2019)でも、ナターシャとクリントの2人が宇宙船でヴォーミアに向かう時に「はるかブダペストから」と発言。
これらをしっかりとストーリーに組み込んでいる点がとても良い。

●ブダペストのナターシャの部屋に弾痕ならぬ矢痕がある。「君と俺じゃ違う思い出」でわかる通り、初めて2人が出会ったときは敵同士だった、という事。

●タスクマスターの設定
上にも書いた通り、原作ではトニー・マスターズという男がタスクマスターの正体だが、MCUではドレイコフの娘に改変されている。
この改変は良いと思う。ちなみに、ドレイコフの娘は『アン"トニー"ア・ドレイコフ』なのできちんと『トニー』が名前に含まれている。

●タスクマスターのコピー能力『フォトグラフィック・リフレクシズ(写真的反射)』が、爆発事故の後に兵器として改造された末に得た能力という点は説得力があって非常に良い。

●ブラック・ウィドウが、アベンジャーズの技を習得したタスクマスターと戦うというそもそもの発想が超面白い。
・ブラック・ウィドウの身のこなしと投げ技
・キャプテン・アメリカの盾技
・アイアンマンの攻撃パターン解析(シビル・ウォーでキャップ相手に使用)
・スパイダーマンのウェブスウィング
・ウィンターソルジャーのナイフ使い
・ホークアイの弓技
・ブラックパンサーの爪

●ナターシャの決めポーズイジり。(デッドプールも似たような事をイジってたけど面白い)

●ナターシャがドレイコフにペラペラと喋らせた後、「協力してくれてありがとう」という。
これは上記のアベンジャーズ(2012)でのロキの尋問の時にもロキにペラペラと喋らせた後に言うセリフ。

●ナターシャがレッドルームから脱出する際、後ろから爆炎が迫ってきて走って窓から飛び降りる瞬間、よく見ると髪の毛が少し燃えている。
映画で爆発に巻き込まれてもなぜか髪の毛が燃えない問題がいつも気になっていたが、しっかり毛に引火するシーンがあるのはなかなか見かけないので嬉しい。




【悪い点】
●公開前の触れ込みでは、「本作を見るとエンドゲームでのナターシャの行動がまた違って見える」などと言われていたが、全くそんな内容ではなかった。
同様に、TVCMなどでも「誰も信じるな」などとナレーションが入り、スパイ映画感を推していたが、全然「誰も信じるな映画」ではなかった。そもそもジャンルはスパイ映画ではない。
ポスターにも「孤独な暗殺者は、なぜアベンジャーズになったのか」と書かれているがそんな事は映画の内容に関係ない。
MCUの「誰も信じるな」的な映画には既に『キャプテン・アメリカ:ウィンター・ソルジャー』という大傑作がある。
これはDisneyJapanの宣伝が悪いのだろうか。

●場面転換後の地名の出し方がルッソ兄弟監督を真似ている感が・・・。

●タスクマスターのヘルメットデザインがあまりカッコ良くない。
原作はドクロマスクを装着しているが、本作では口にややドクロ要素はあるもののスキーのゴーグルっぽくてドクロ感が薄い。
Andy Park氏のデザインは大好きだが、タスクマスターの顔だけはもっと原作に近づけてほしかったな。

●タスクマスターの『フォトグラフィック・リフレクシズ(写真的反射)』で、アベンジャーズの面々の能力をコピーする様子が映像を見ているだけだったのが少し残念だった。
ナターシャがレッドルームで習った戦闘技術以外に、長いアベンジャーズ生活で得た技を繰り出して一度はタスクマスターを撃退!しかし、次に会った時はすでにそれを覚えていて効かない・・・ッ!!というような、実戦でもどんどん相手の技を吸収して強くなっていく・・・という、ジョジョ3部のアヌビス神のような展開が欲しかった。
尺の問題で難しいので、Disney+のドラマでこういう要素を入れてタスクマスターをもっと活躍させてほしい。

●エレーナ・ベロワを演じたフローレンス・ピューが、2代目ブラック・ウィドウを名乗る人物にしてはムチムチしすぎ。
筋肉があって肉弾戦が強そうというわけでもなく単に太っているだけ。
既にオバサンになっているメリーナ(レイチェル・ワイズ)の方がスタイルも良く綺麗だった。

●レッドルームが空飛ぶ要塞だったのは驚いたが、しかし、そんな悪の組織の要塞がず~~~っと何年も何年も飛んでいたとなると、スターク・インダストリーズの衛星やワカンダの技術で見付けられていないという事に違和感がある。

●エレーナがドレイコフが乗った飛行機のタービンを破壊するシーン。
要塞側ではなく空側を背にして爆発させるから落下してしまうわけで、180度回って爆風で要塞側に飛ぶような位置からやれよ!と思った。

●タスクマスターの「洗脳を解いて終わり」という倒し方がつまらない。
近年のMCUは、『主人公がしっかりとブッ倒す』(殺害・非殺害どちらでも可)という勝ち方をする方が少ない。
・ドクター・ストレンジ(2016)はタイムループに根負けしたドルマムゥがゼロッツをツマミ出す。
・スパイダーマン:ホームカミング(2017)はヴァルチャーが勝手に自爆。
・ソー:ラグナロク(2017)はスルト(サーター)がヘラを殺害。
・アントマン&ワスプ(2018)はジャネットがゴーストを救済。
・キャプテン・マーベル(2019)はビビったロナンが撤退。ヨン・ロッグも無様に宇宙船で飛ばされる。
ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシーVol.2(2017)、ブラックパンサー(2018)、アベンジャーズ:エンドゲーム(2019)、スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム(2019)はしっかりとブッ倒した。
Disney+で配信中のMCUのドラマ3作のうちしっかりヴィランを倒すのは1つだけ。(ドラマ未見の人の為にあえてボカす)

●最後、「どっちも逆さまだね」というが、これは冒頭の子供時代に2人でブリッジをしていた時に言っていたセリフとリンクしている。
しかし、別段グッとくるセリフでもないので感動は無し。

●ナターシャにアベンジャーズ以外の『家族』がいるという点。
これが本作最大の問題点だ。他はそこまで大した問題ではなかったが、この1点のみで自分の中では大幅に減点となった。
「アベンジャーズが無くなってしまっても、ナターシャには居場所がある」と明示してしまったのでアベンジャーズとの絆が薄れてしまうように感じられた。
時系列的にはシビル・ウォー(2016)~インフィニティ・ウォー(2018)の間の出来事で、最終的に『家族』は離散するか死別するのではないかと考えていた。
しかし、誰も死ななかった。
エンドゲームでのナターシャの選択と死を知った状態で見ることになるのでそれを逆手に取って、「ナターシャが一瞬自分の命を投げ出すことを躊躇してしまったが為に、家族が死んでしまった」という物語にすると、エンドゲームでのナターシャの選択に説得力が増すし、「アベンジャーズ以外にも家族おるんかい問題(※)」も解消される。
なぜこのような構成にしなかったのかが疑問だ。
この展開がないという点で、本作は全くの蛇足と化してしまったし、MCUの中でもかなりの低評価になってしまった。
※エレーナは原作でも2代目ブラック・ウィドウになるので生き残りが必須だが、メリーナかアレクセイ(または両方)は本作で死ぬべきだった。



【小ネタ】
●時系列的にはシビル・ウォー(2016)直後なのでタディウス・"サンダーボルト"・ロス国務長官がナターシャを追っている。
シビル・ウォーの時点で心臓の手術をしたと言っていたが、どうやらまた手術したようだ。
ロスは「ワカンダ国王を攻撃した」と言うが、これはシビル・ウォーにてキャップとバッキーがクィンジェットに乗ろうとした時に現れたブラックパンサーにウィドウズバイトで足止めをした件の事。

●エレーナ・ベロワ(Yelena Belova)は、ヤレナ・ベラーヴァと表記される場合もある。
コミックではエレーナはアベンジャーズを裏切り殺害しようと試みるも、爆発に巻き込まれて全身大火傷を負う。
ヒドラに入ったり改造されたりA.I.M.に入ったり色々と忙しいヤツ。

●ナターシャがドレイコフと娘を爆弾で攻撃した時の回想シーン。
無線の相手はクリント・バートン。
ジェレミー・レナーのカメオ出演。

●ナターシャが一時的な隠れ家で見ている映画が『007ムーンレイカー』。
敵が極秘建設した宇宙ステーションにいるという映画。
本作のレッドルームを暗示している。

●MARVELコミックにおけるメリーナは、メリーナ・ヴォストコフというロシアの暗殺者である。
このメリーナ・ヴォストコフは、『アイアン・メイデン』というヴィランで、鋼鉄の仮面をつけている。
本作ではメリーナが家の隠し部屋を開けた時に、よく見ると部屋の奥にアイアン・メイデンの仮面が置いてある。
実際にアイアン・メイデンとして活動をしている訳ではなさそうだが、ナイスなファンサービス。

●刑務所の中でアレクセイと腕相撲をする巨漢の名前はウルサ・メジャー。
アレクセイも彼を「ビッグベア」と読んでいるように、コミックにおけるウルサ・メジャーは大きな熊に変身する能力のミュータント。
ミュータントは本来X-MENシリーズに出るものだが、20世紀FOXをDisneyが買収した為、最近ではジワジワとX-MEN系キャラクターがMCUに登場し始めている。
ちなみに、このウルサ・メジャーを演じたオリヴィエ・リヒタース(身長218cm!!)は、「俺はMCU初のミュータントを演じた!」と大喜びしていた。
・・・が、残念ながらMCU初のミュータントはワンダとピエトロ兄妹。アベンジャーズ:エイジ・オブ・ウルトロンでは『強化人間』ということになっていたが、本当はミュータントだったことがDisney+の『ワンダヴィジョン』で示唆された。詳しくは近々ワンダヴィジョンのレビューにて解説。

●エレーナがアレクセイ/レッド・ガーディアンを「クリムゾン・ダイナモ」と呼ぶ。
クリムゾン・ダイナモはMARVELコミックにおいてはアイアンマンのような金属製のパワードスーツを着ていて、幾度となくアイアンマンと戦ったロシア出身のヴィランだ。
実は、アイアンマン2(2010)に登場している。
ミッキー・ローク演じるイワン・ヴァンコ/ウィップラッシュの父親『アントン・ヴァンコ』こそ、原作ではクリムゾン・ダイナモになる男。
また、イワンがロシアを出国する際に使用する偽IDに記載された名前が『ボリス・ツルゲネフ』だったが、ボリスは原作では2代目クリムゾン・ダイナモになる男。
ちなみに、アイアンマン2ではウィップラッシュMk2が無骨なパワードスーツだったが、原作のウィップラッシュはむしろモナコのレース場に現れた時の姿の方が近い。
あの無骨なパワードスーツは色を赤くするとクリムゾン・ダイナモにソックリな見た目なので、MCUにおいてはウィップラッシュとクリムゾン・ダイナモは混ざって1つのヴィランになっていると考えた方が自然だ。

●ポストクレジットシーンにヴァルが登場。
コロナのせいで公開延期した事により、Disney+のファルコン&ザ・ウィンター・ソルジャーに先に登場してしまったが、ヴァルは今後のMCUに大きく影響する人物だろう。
ヴァルについては、近々ファルコン&ザ・ウィンター・ソルジャーのレビューにて詳しく書くつもり。
本作の本編は物語内では2016年の設定で、ポストクレジットシーンはエンドゲーム後の世界なので2023年。
7年の間に、エレーナは既にヴァルと組んで仕事をしている様子。(エレーナは指パッチンで5年間消えていた?)
クリントをターゲットにする様子だが、これは2021年11月24日配信開始予定のDisney+のドラマ『ホークアイ』に続く。