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ゴジラVSモスラのKuutaのレビュー・感想・評価

ゴジラVSモスラ(1992年製作の映画)
2.9
1992年公開の19作目。前作のターミネーターごっこに続き、今度はインディジョーンズごっこで始まる。いきなり小林聡美が棒読み過ぎる。古い橋を渡っている途中で落ちる本当に魔宮の伝説そのままのシーン、イケイケの別所哲也だがカメラ目線で川に飛び込むのには流石に閉口した。

環境保護がテーマになるのはモスラのキャラクターを考えたら当然だが、ゴジラの扱いに困っている感があった。基本的に昭和の「モスラ対ゴジラ」をなぞったストーリーで、ゴジラ自体は安定してカッコいい(富士山からの復活は名場面)ものの、追加された環境保護テーマが全くゴジラと絡んでいない。そもそも環境破壊を安易なサラリーマン批判に重ねる設定自体が弱すぎる。

前作「VSキングギドラ」から感じていたが、人間パートが面白くない根本には、主人公たちを作劇上扱いやすい「政府側」にばかり置いている点に原因があるのではないだろうか。世俗と科学や、庶民と権力者といった対立軸を作りながら主人公たちの奮闘を描くべきなのに、頭を捻らずハリウッドの劣化コピーのアクションに逃げつつ(当然ハリウッドより予算は無いからショボい)、政府関係者だからなんでも許されてしまう物足りない展開になっている(別所哲也がコスモスを盗んだ件とか、有耶無耶になっている)。昭和の作品はマスコミや、市井の人の目線の入れ方が上手かっただけに、こうした粗さはVSシリーズの残念な脚本の典型だと思う。

今作でも小林聡美と別所哲也を自然保護のテーマやコスモスの扱い方に絡めてもっと対立させた上で、別所哲也の活躍をきちんと描いてから復縁させるべきなのに、全てが曖昧なまま話が進むので、「娘を通してモスラの教えを学び、家族が再生する」という王道のラストを迎えてもカタルシスがない。

特撮パート。モスラ幼虫は良かった。お決まりの尻尾食いつき、さらには胸に体ごと突撃する奮闘に胸が熱くなる。攻撃の甲斐なく無残に吹っ飛ばされるシーンはもっと見たかった。東宝の大プールを存分に生かした、幼虫を自衛隊が海上で食い止めようとするシーンは爆発や戦艦の壊されっぷりが迫力満点でとても良かった。

モスラ成虫は個人的に今ひとつ。羽のしなりが無くて固そうに見えた。色味も人工物っぽくて…。ゴジラスーツはあれだけこだわって作っているのに、どうもモスラはおもちゃの人形っぽく見えてしまい食い足りない。割とアグレッシブに光線出すのもなあ…。昭和版は本当に生きてるみたいだったのに。

バトラはそもそも固そうな見た目なので造形は気にならなかった。鳴き声をラドンから転用するのはファンサービスなのか、やる気がないのか。ラストでなぜ味方になったのか、正直よく分からなかった。

ゴジラシリーズは今作以降、光線の撃ち合いを中心とした怪獣プロレスにシフトしていく。極彩色の大決戦というコピーに恥じないモスラとバトラの最後の共闘は何度見ても良い。57点。
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