みかぽん

耳に残るは君の歌声のみかぽんのレビュー・感想・評価

耳に残るは君の歌声(2000年製作の映画)
3.8
差別や戦争の時代に翻弄されながらも、安住の地を求めて海を渡り、父親との再会を信じて生きた主人公フィゲレ。
これは名もない多くのユダヤ人とその家族の歴史と重なっており、そうした彼らに捧げられている物語。

全ての登場人物に戦争の影がひたひたと忍び寄り、その先の災いや死の影が深く映り込む、じんわりの重さが身に乗りかかる映画だ。
自分自身がユダヤ人であれば同胞の、あるいは海を渡った家族の歴史と重ねて入り込めるのだろうが、私(達)には擬似体験は出来ても根底部分で分かってはいないはず(別にそれを求められている訳ではないのだけど、何とはなしの後ろめたさがある)。。

では、どうすれば良いのか。
若干の不謹慎さで肩身は狭いが、登場人物チェックが本編の楽しみ方のひとつになる…のかも。

先ずは主人公のクリスティーナ・リッチ。凛とした目ヂカラに主人公の意思の強さが重なり、物語をがっつり牽引していて二重丸。
彼女が初めて恋をするロマの青年、ジョニデのお色気に至ってはもはや前人未到の領域。彼を前にして動じない女子がいるなら是非ともお会いしたい位だわっ!
主人公の友人役のケイト・ブランシェットは安定の凄み。幸せを得るために男コマしを日々、計算ずくで体現し尽くす「ブルー・ジャスミン」の前哨版的役柄を演じている(こういう人って世の中にいっぱいいるのに、何故か劇中で幸せになった人を見たことないのは何故だろう。大きな口元は綺麗に塗られて終始ニンマリなのに、目が射すようで本当にコワイです…(゚Д゚) )。
あと、彼女のターゲットとなったオペラ歌手役のジョン・タトゥーロは、浅はかで、横柄で、実の所は気の小さい男の役を、やらしーく、そして実は緻密に演じていて。
でもテノールのアリアにはずーんと浸れちゃう(まぁ勿論吹き替えなんだけどね)。

という訳で、万人ウケはしないと思うけど、個人的にはとても心に沁みる、好みの作品。です。
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