けんたろう

女の勲章のけんたろうのレビュー・感想・評価

女の勲章(1961年製作の映画)
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勲章が大きすぎる気がしなくもないおはなし。


やはり京マチ子さんは素敵だ。
皆んなからは先生と慕われる三十代も半ばの女性でありながら、いわゆる"男を知らぬ"がためにいいように利用されるいとはん(お嬢さん)という役柄を演じた、今回の彼女は『羅生門』や『地獄門』、『赤線地帯』とはまた違う魅力を持っている。
僕は彼女にまたもや惹かれてしまった。

そんな彼女(と言っても京マチ子ではなく、京マチ子が演じた彼女)の"変化"を如実に表したシーンが二つある。
一人の男によってまるきり変えられた価値観がすっかり見透かされてしまうシーンと、黒装束をしながら自らの衣装を纏ったマネキンを切り裂く(すなわち自殺か)シーンだ。
一方には何んとも言えぬ悲哀があり、もう一方にはOPの奇怪な音楽が繋がるおぞましさがあって、どちらも等しく印象深い。


…しかし物語はというと、キャラクターが渋滞気味で見苦しく、オチも中途半端なため、まとまりに欠けていたように思う。
だから、タイトルやジャケット、軽快な関西弁も、そしてそこに内在するブラックな物語も好みではあったものの、それを手放しで「面白い」だの「凄い」だのと言うことはできない。なんだか残念。