やんげき

ブルーベルベットのやんげきのレビュー・感想・評価

ブルーベルベット(1986年製作の映画)
3.9
1986年の作品。今観ても時代を感じさせないリンチワールドすごい。
赤いバラとドリーミングなオープニングから、草むらの中を蠢く虫達に寄せ、狂気の世界へ突入していく演出がやば過ぎて居ずまいを正した。
人間が持つ”夢を観る獣”とでもいうような、理性と知性をすっ飛ばした「これもまた人間」という新たなキャラクター造形がすごい。

ストーリーテリングも、耳を拾う下りのダークファンタジー感からの素人探偵サスペンスと思いきやエロティッククレージーへの激流的な展開だが、不思議と一貫性を持たさせている所に「カルトの帝王」デヴィット・リンチと呼ばれる由縁があるのかもしれない。

クレージーワールド(本作では「ストレンジワールド」と何度も言っていたけれど)な突入してからのイザベラ・セリー二、デニス・ホッパー、ディーン・ストックウェルらの怪演たるや素晴らしい。
覗きの欲望、性倒錯、精神世界との混濁、甘い恋物語と暴力に支配された世界のミキシング、それらを日常と何度も往き来させることで、人間の表裏を常に意識させる。

人間の裏側を暴くという点で映画というよりは、とても文学的な香りのする世界観だと思う。

ラストは何気にオープニングの虫の下りとも繋がっていて、リンチ監督は「感覚で撮った」とかインタビューで言っていたけど、名監督の名作は伊達じゃないよ。
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