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我が闘争のTSのレビュー・感想・評価

我が闘争(1960年製作の映画)
3.7
【事実のみを映した作品】
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監督:エルウィン・ライザー
製作国:スウェーデン
ジャンル:戦争・ドキュメンタリー
収録時間:114分
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スウェーデンのドキュメンタリー映画。スウェーデンが製作しているのがまたミソとなってきます。全編日本語のナレーションがついています。ドキュメンタリー映画というか、当時の映像を延々と使用しながら第二次世界大戦の背景を説明するいわば「教材ビデオ」の側面も持ち合わせているため、世界史や第二次世界大戦に興味がないと少し退屈かもしれません。
我が闘争とは、ヒトラーが獄中に書き上げた名著として有名です。それに擬えて本作のタイトルとしています。ヒトラーに関する映画はたくさん出ていまして、現在公開中の『帰ってきたヒトラー』も記憶に新しいですが、本作はヒトラーを中心としたナチ党の動きを見せていくのでかなりこってりしています。

ご丁寧にも第一次世界大戦期やヒトラーの生い立ちも紹介してくれるので、これ一本である程度の知識を身につけることができると思います。それにしてもヒトラーの演説は凄まじい。これ程の演説をできる政治家は現在日本にはいないでしょう。言葉で人の心を掴んでいく。その結果彼が総統になり、これらの事態を招いたのでしょう。
総合的に描いているので、部分的なものを深く知りたい場合はナンセンス。例えばアウシュヴィッツについて深く知りたいと思っても、勿論紹介はされますがそこまで深く掘り下げない。アウシュヴィッツについて知るには、ショッキングな映像は多いですが『夜と霧』が秀逸でしょう。それでも、今作にもガス室や焼却炉、死体の映像が流れます。その点はご注意を。

ヒトラーの映像をみていると、現在の北朝鮮を彷彿させられます。北朝鮮の正式名称は朝鮮民主主義人民共和国です。社会主義国なのに民主主義という名前が入ります。いかにも矛盾してると思ったことはありませんか?果たして民主主義というのは必ずしも良いものなのだろうか。どんなに良いものでも欠点はあります。逆手に取るとそれは権力者の強みにもなります。民主主義が手段としては正攻法と認められるものの、そこでお墨付きをもらえさえすれば独裁になっても良いというタテマエが出来てしまいます。
ヒトラーも紛れもなく国民から選ばれた人です。選ばれてすぐに独裁に走れば国民から反感を買います。しかしそれが浮き彫りに出ることはあまりなかった。権力の抑圧はもちろんあったとは思いますが、まさに巧妙な人物であるということが出来ますね。

ということで、今作は完全に「お勉強映画」と言えます。普くすべての人に知ってもらいたい内容ですが、お好きな方だけどうぞ。
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