nt708

サイコのnt708のネタバレレビュー・内容・結末

サイコ(1960年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

シナリオの指南書、映画演出の指南書、名作選、、映画を作る側からも観る側からも必ずと言って良いほど名前を聞く本作。その存在を知りながらもこれまでどこか敷居の高さを感じて敬遠してきたが、思い切って観ることにした。

まずもって触れるべきは本作のストーリーとしての面白さだろう。不動産会社に勤める女性が顧客の契約金を持ち去り、姿を消す。ここから彼女がどのような行動を取り、周りの人間がどのように彼女を見つけるのか、、というありがちな展開に転ぶと思いきや、彼女が滞在先のホステルで何者かに殺害される。ふたつ目の事件の解決を物語の軸に置きながら、彼女の家族や恋人でありひとつ目の事件の関係者でもある人々がふたつの事件の間で翻弄される姿を重厚感をもって描く。事件の解決だけではない、そこに関わる人々の心情まで生々しく描くことで人間がいかに脆いものかを暗示しているような気がした。

もちろん演出も現代映画の礎になっただけのことはある。現代よりも技術が限られているゆえに派手な映像を撮っているわけではない。にもかかわらず、音楽や照明とも相まって生み出される緊張感、、まさに映画が総合芸術と呼ばれる所以を感じる一作だった。

本作のような名画のうちまだまだ観ていないものがたくさんある。これから少しずつ時間をかけて勉強していきたいと思う。
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