たりほssk

落穂拾いのたりほsskのレビュー・感想・評価

落穂拾い(2000年製作の映画)
4.2
~アニエスの謙虚さ~

恥ずかしながら「落穂拾い」の正確な意味をこの作品で初めて知りました。ミレーの絵画ものどかな風景と言うよりは、「この麦をライバルに取られてなるものか!」(ちょっと違う?)のような、当時の農民の切実で必死な状況を描いていたんだ…と思うと、目から鱗状態になりました……

それはともかく、アニエスその人自体がすごく好きです。この作品は、かがんで物を拾う人をミレーの落穂拾いの農民にリンクさせ、そこからさらに現代の「拾う人々」の姿を捉えていきます。

この作品の特徴の一つは「偶然性」だと思う。アニエスは、前もって現代の落穂拾いから貧困などの社会問題をあぶり出そうなどという意図を持っている訳ではないように感じました。自分の関心が向くままに撮影を行って、いくつかの偶然も伴って、結果としてとても深い問題に辿り着いているという印象でした。

アニエスは皆に興味津々で質問していましたが、それをある方向に誘導しようという感じは全くしなかった。アニエスの物事を捉える目はとても優しくて、事実を事実として捉え、そのままを浮かび上がらせる。その存在自体が大切なのだというように…。登場した人たちは、皆自分の事を語ってどこか生き生きとしているように見えました。自分の手や白髪を映し出すのもそういうことなのかもしれないと思っています。アニエスの目に物事はどう映っていたのか、どのように捉えていたのか、興味を覚えます。もっとよく理解したいです。素晴らしいドキュメンタリーでした。
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