継

オフサイド・ガールズの継のレビュー・感想・評価

オフサイド・ガールズ(2006年製作の映画)
3.9
2005年のワールドカップ最終予選イランvsバーレーン。
イランにとって本戦出場がかかった大一番。サッカー好きとしては、スタジアムへ向かうバスで試合前から盛り上がる万国共通な男たちが仲間や同士のようで既に楽しい。

そんな中、男のフリをして紛れて入場しようとする少女。ダフ屋に足下を見られ高値で売り付けられるチケット。ボディチェックを拒んで拘束され、歓声が響くスタジアムの外壁と鉄柵でユルく囲った即席の拘留所に拘束されてしまう。そこには同様に締め出された少女たち。
冒頭のテロップ曰く、“イランでは女性が男性の競技を観戦出来ない”。

トイレに行きたくても男性用しかなく、仕方なくアリ・カリミの顔アップのポスターをお面代わりに被って(笑)スタジアム内の男性用トイレへ引っ張ってくギャグセンスが楽しい。読めないけど恐らく国や色んな不満をぶちまけた落書きだらけのトイレでそれを読むな!と言われて個室へ。他の利用客が入らない様に見張る警備員。蔑視はするが最低限の尊厳は保とうとする、ユルくて不自由で謎だらけのイランの事情が垣間見れる。

戻らない二人に “隊長に叱責される” と心配する警備リーダー。狼狽する様子をニヤニヤ蔑む少女たちと、終始劣勢な警備員達がスタジアムの外で繰り広げる “絶対に負けられない戦い”!
「何で女は入っちゃいけないの?」「スタジアムは男ばかりで興奮のあまり汚い言葉で罵るから…」稚拙な屁理屈はド直球な疑問に押されて防戦一方。
やがて、大歓声にイランのゴールを知り、少女たちは飛び跳ねて喜びを爆発させるが... 。


緑白赤に染め分けられた横縞の三色旗。アリ・カリミ、アジジ、マハダビキア、そしてダエイ...イラン国内のみならず、過去の最終予選で日本代表とも凌ぎを削った名プレイヤーの名前が懐かしい(本人たちは一切出てこないけど)。この頃のイラン代表は足元のスキルが高くて、屈強なフィジカルがあってホントに強いチームでした。でも、アジアを出ると何故か実力の半分も出せない内弁慶なところがあって、強さと脆さが同居した傍目に見て何とも歯痒いチームでもありました、、アレ何の話だっけ( ゚ 3゚)?\(--;)

本作に試合や選手の映像は一切出てきませんが、女性差別を描きながらもその描写にシリアスな暗さは無く、彼女達と警備員達の攻防を通じて映画は大一番の臨場感を生き生きと伝えます。
ロスタイムの3分を凌げば本戦出場が決まる、その瞬間を固唾を飲んで聞く収監バスの車中。アンテナがユルくて警備員が手で支えるも、何度か中断するラジオ放送が辛うじて伝えるイランの勝利。鳴らす爆竹と振られる国旗、前後を走る車が鳴らすクラクションでお祭り騒ぎとなる街の様子がアツい!
この監督も、間違いなくサッカー好きですね(o^-')b !

これまで特例的に女性の観戦が認められたゲームはあるものの、依然として旧来の締め付けは根強く、イランの女性達は今もなお劣勢を強いられています。形勢を挽回するには何よりフェアな審判が必要なのは言わずもがなですが、現実的にはもう少し世代が変わらないと無理な気も。。
3分より、相当多くのロスタイムが要りそうです⚽。
継