エイデン

ルパンのエイデンのレビュー・感想・評価

ルパン(2004年製作の映画)
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1882年、ノルマンディ
ボクシング教師の父テオフラストと心優しい母アンリエットのもとに生まれた少年アルセーヌ・ルパンは、母の義兄ドルー=スビーズ公爵の屋敷に住まい、父に稽古をつけてもらいながら幸せな日々を送っていた
しかしある日、テオフラストに泥棒の容疑がかかり、憲兵たちが彼を連行しにやって来る
テオフラストは抵抗して屋敷から逃げ去ってしまい、残されたアンリエットとルパンも、家名に泥を塗ったと憤るドルー=スビーズ公爵に屋敷を追い出されることとなってしまう
同年代のドルー=スビーズ家の従妹クラリスは、愛人だった曽祖父に首飾りをくれたというマリー・アントワネットがギロチンで首を斬られたように、テオフラストは手首を斬られると驚かすのだった
ドルー=スビーズ家で過ごす最後の夜、ルパンの部屋にこっそりとテオフラストが現れ、自分は泥棒だと明かした上で、マリー・アントワネットから首飾りを盗んだ先祖がいる公爵家のような金持ちや、権力者からしか盗まないと話す
そして盗みとは情熱であると説き、監獄行きを避けたければ若いうちから慣れておけと彼をたぶらかすのだった
ルパンはその言葉通りに公爵夫人からダイヤの首飾りを盗み出し、屋敷の外で待機していたテオフラストに手渡すが、父は一緒には連れて行けないとそのまま去っていってしまう
そして明くる日、ルパンとアンリエットは屋敷を追い出されるが、その途中 目撃したのは殺されていたテオフラストの姿だった
それから15年後
税関担当官のラウル・ダンドレジと名乗り豪華な客船に忍び込んだルパンは、新年のお祝いで賑わう貴族たちから次々と宝石を盗み、正体が露見しても華麗に船から脱出して見せる
父の言葉通りに金持ちや権力者を相手取り、今や凄腕の泥棒として名を馳せるルパンだったが、病気で入院する母アンリエットのことを思う心は変わっていなかった
警官を装いアンリエットの元へ現れたルパンは、看護師から母の容体が悪く衰弱していることを知らされる
しばしの再会に喜ぶルパンにアンリエットは、父テオフラストを殺したという人物が会いに来たと明かす
だがそこに事件の手がかりを求めてやって来た憲兵隊が現れ、とっさにルパンはベッドの下へと隠れる
アンリエットは憲兵に、自分もルパンも無実だと訴えるも、その興奮で心臓麻痺を起こし帰らぬ人となってしまう
葬儀でも身分を偽り、静かな別れを告げたルパンに、あの時 病院にいた看護師が声をかける
正体を知りながらも口を閉ざす不思議な彼女に連れられ、ルパンがやって来たのはドルー=スビーズ家だった
彼女の正体は従妹のクラリスだったのだ
クラリスはルパンに仕事に就くように言い、父のボクシング講師の仕事を紹介
正体にも気付かれず、実力を見せつけたルパンは無事に雇用され、ラウルとして屋敷に身を置くこととなる
クラリスとも恋仲となったルパンは、ある夜 謎めいた文言が記されたドルー=スビーズ公爵の読みかけの本を目にする
そこへ「決着をつける」と息巻く公爵が現れ、その本を抱えながら何処かへと行ってしまう
直感的にその後を追ったルパンは、“ジュミエージュ修道院”へと辿り着く
その中では、公爵ら男達が怪しげな会合を行っており、金の十字架を火で炙り“ルーアン大聖堂”という文字が浮かび上がったことに歓喜していた
オルレアン公を中心とする彼らは3つの十字架を集めてフランス王家の隠された財宝を手にし、王政復古を画策する王党派の生き残りだったのだ
更にそこへ、罪人としてジョゼフィーヌ・バルサモ・カリオストロ伯爵夫人が連れてこられる
彼女はフランス王家を揺るがした伝説的な詐欺師カリオストロ伯爵の娘と語っていたが、100歳以上であるはずのその身体は30代にしか見えぬほど若々しかった
魔女と呼ばれ恐れられるジョゼフィーヌは、かつて十字架の1つを奪い去ったとして罪に問われていた
くしくもそれに加担してしまったボーマニャンは彼女を弁護するも聞き入れられず、王党派からの除名を言い渡され、ジョゼフィーヌも処刑されることに
一部始終を目撃したラウールは密かにジョゼフィーヌを救い出すが、これをきっかけに大きな陰謀と戦いに身を投じることとなる



モーリス・ルブランの生み出した『怪盗ルパン』シリーズの誕生100周年を記念した作品

原題の『La Comtesse de Cagliostro』からもわかる通り、怪盗紳士アルセーヌ・ルパン最初の冒険を描く
ハリウッド映画ばりの派手さは無いものの、かなり金と力は入れている様子
キャラクターや世界観もそれっぽさを重視して、大きな脚色もしていないので、原作を重視しているのが見て取れる

ただ一方で雰囲気がかなり硬派
華麗に盗みを働くカッコいいルパン像を思い描いていたけど、ルパンのキャラもやや辛気臭い
まあ家族の死とかが深く関わっていたりはするものの、ケレン味溢れるキャラクターを想像していたので、その辺りはギャップもあったかな

ただ前述の『カリオストロ伯爵夫人』に加えて、ルパンの幼少期を描いた『女王の首飾り』をミックスした脚本とか、改変こそ多いものの、原作ファンとしては自然で忠実に思えて嬉しい部分も多い

全体的にスタイリッシュさには欠けるものの、古典的名作の映画化としてはかなり真面目な部類
それでもやや悠長な気はするけど、近年としても珍しい『怪盗ルパン』の映像化作品ではあるので、ファンは観ましょう
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