KengoTerazono

チャイニーズ・ブッキーを殺した男のKengoTerazonoのレビュー・感想・評価

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暴力に対して誠実な映画だった。
クロースアップしすぎていて、何が起こったのかわからない。でも音やキャラクターの表情で何かが起こったのはわかる。暴力というのはそういうものなのだと思う。決してスペクタクルではなく、振るわれたり振るったりする当事者たちの眼差しは、超クロースアップのキャメラのそれだ。
思わず「近い!」と言いたくなるくらいのクロースアップが頻出し、観客は間近でキャラクターを窃視する。これもやはり暴力的だ。キャラクターに対する暴力だけでなく、観客は観ることが暴力的であることをとことん突きつけられる。ズーム・インがとても効いていた。役者の移動に合わせてキャメラを動かす時も、長焦点であることが活きていた。

女の前で見栄を張って、くだらないプライドでチャイニーズ・ブッキーを殺さなくてはいけないハメになった男が、「人は自分を誤魔化すために何かのフリをしないと生きていけない」と言うと、重みが違う。これが映画で、そこにいるキャラクターたちも誰かのフリをした役者なんだということも相俟って、メタ的だと思った。

ボードヴィル的な世俗的な娯楽(この映画ではストリップショー)、そこに生きる女とそんな女を雇う(所有している)男はカサヴェテスにとって大事な命題なのだろうか。『アメリカの影』と合わせて観たから尚更そう思った。

赤は血の赤だけでなく中国の赤でもあるだろう。店も赤い。車も赤い。
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