ツクヨミ

お茶漬の味のツクヨミのレビュー・感想・評価

お茶漬の味(1952年製作の映画)
4.1
"夫婦はこのお茶漬けの味なんだよ"
妙子は夫の茂吉を偽って女友達と遊んでばかりの毎日。そんな折に友人の娘節子がお嫁に行く騒動から夫婦関係に亀裂が入り…
小津安二郎監督作品。円熟した夫婦の微妙な関係を描いたドラマ。今作は夫婦の些細な喧嘩から仲直りまでを綴っておりシンプルに感情を揺さぶられました。お見合い結婚でしっかりとした恋愛をせず結婚した2人の関係性は脆く崩れやすい…日本の結婚観を真摯に描いている。恋愛関係を続けるにはお互いの性格や価値観をどこまで許容できるかだと個人的に思っているので、今作の喧嘩は妻が夫の些細な仕草を許容できなかったからだと感じた。一度綻びが出ると全て崩れてしまう危険性がある…人間関係はそういうものなのかもしれない。
そして"夫婦はこのお茶漬けの味なんだよ"というセリフは、固くならずにゆったりとした関係だということだ。お茶漬けはちょっと不作法で意地汚いが"気楽"である…お互い気楽にいこうという夫の思いをお茶漬けで表現するとはさすが小津安二郎監督。
そして今作でも小津安二郎監督の"小津調"は健在であるが、更に今作はズームインとズームアウトを効果的に使っていた。背景だけのカットなのにぐっとズームする…画面に引き込まれるような感覚。
全体的にお見合い結婚の危機を描きつつ、小津安二郎監督が考える夫婦の在るべき姿を映し出した素晴らしい作品でした。
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