そのじつ

しとやかな獣のそのじつのレビュー・感想・評価

しとやかな獣(1962年製作の映画)
4.8
今月のBS松竹東急は川島雄三特集。
週一でやります。BS見られる環境の方は料金かからないで見られるはず。

脚本・演出の天才的な手腕。
悪辣な詐欺・強請りたかり手段を選ばぬ家族4人。
「パラサイト」の悪人バージョン(?)
娘に妾をやらせ、しゃあしゃあとその2号用マンションに入り込み乗っ取ってしまう厚顔無恥具合に恐れ入った。

またその下品な有様を、涼しい顔してお上品な口調で澄ましているんだから風刺漫画のように超ツボってくる。

蕩々とまくしたてる長広舌は含蓄のあるようでまったく軽薄。
しかし一瞬だけ、本気の心の奥底が口を衝いて出た瞬間、映画内で唯一の彼らの顔の大写し。
開始20分ほどのシーンで、なんやえらいカッコいい映画やん!とそこから座り直して見入ってしまった。

彼らの狂想曲が本筋で、そこに若尾文子演じるやり手悪女のエピソードが絡んでくる。
映画の紹介文を見ると若尾がストーリーを回しているように書いてあったりするがそうでもなかった。重要だけど、主役はこのパラサイト家族4人だ。

狂乱のシーンに突如始まる能楽の鼓と掛け声。
舞台演劇のように画面奥に据えられた団地5階の開け放たれた窓。
ハイテンションな会話劇。
捻れ拗れた男女関係。
悪女の手管。
男の未練たらしさ。

しかしなんと言っても父親(伊藤雄之助)と母親(山岡久乃)の阿吽の呼吸や佇まいの説得力が得難い。若尾文子も良いが、この2人が最高だった。

文子の役名が三谷幸喜と一文字違いでちょっと笑った。
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