ふっくー

反撥のふっくーのレビュー・感想・評価

反撥(1964年製作の映画)
3.9
「水の中のナイフ」に続く長編映画第2作。ロマン・ポランスキー監督初の英語作品。
仏の大女優カトリーヌ・ドヌーヴが次第に狂気に駆られていく女性の心理をおぞましい映像と共に熱演したサイコロジカルホラーの傑作。

ロンドンで姉と暮らすキャロルは、姉が妻子持ちの男を毎晩のように連れこんでいることに強い嫌悪感を抱いていた。
毎晩聞こえてくる姉達の夜の営みに、彼女は男性への恐怖を募らせていく。
ある日、姉とその恋人が休暇で旅行に出発し、束の間の一人暮らしを始めるが、キャロルの恋人が無理やり家に押し入ってきたことによって、彼女の精神は少しづつ崩壊していく。。。

ロマン・ポランスキーのホラーといえば、「ローズマリーの赤ちゃん」が有名ではありますが、今作も言わずと知れた名作ですね。
1人の女性が男性への恐怖と不信感を募らせていき、それが蓄積され精神を崩壊していく様を、ジメジメとした映像、そしておぞましい幻覚を交えて描く今作は、今見てもなかなかゾワゾワします。
ロンドンの街並みを歩く時に流れるやかましいくらいのBGMは彼女の精神状態を表しているかのように不愉快に鳴り響く。
見た目が綺麗なキャロルは街中を歩いてるだけでも浮浪者の男に「俺といいことしないか?」など声をかけられる。まともに外を歩けなくなっていき、恋人の心配する声や、キスなども「恐怖と不快」だけしか感じなくなり、家に引きこもってしまう。

夕食で食べようとしていた「ウサギの丸焼き」を真夏の熱い部屋にそのまま放置するシールがあり、そのウサギのグロテスクな造形が頻繁に画面に映る。その度に腐敗が進み、周りには蠅や蛆虫がたかっていくのだが、その徐々にウサギの腐敗が進んでいく様はキャロルの精神が徐々に崩壊していく様を照らし合わせているかのようですね。

夜中には男性に襲われる、壁の亀裂が次第に大きくなっていく、触ると手形がつくくらい柔らかくなった壁、リビングが別の部屋の様に広くなる、そして壁から突き出してくる無数の手。
これらは全てキャロルの幻覚であるが、かなりリアルに気持ち悪く描かれる。

眼球のアップから始まる冒頭シーンから、ラストは家族写真の幼い頃のキャロルの眼球がズームになっていく終わり方で、どこか悲しくて切ない。
幼いキャロルが見つめていた先は父親?であり、その時から男性への恐怖を感じていたのかな??

地味な映画ではあるけれど、1人の女性が段々と精神を崩壊していく様をこの時代から作り上げるロマン・ポランスキーはやっぱ凄いし、変態だと思う←褒めてます笑。

主演のカトリーヌ・ドヌーヴの熱演も最高です。
ふっくー

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