Habby中野

男はつらいよ 寅次郎と殿様のHabby中野のネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

”SNS映え”以前の下灘駅が見られるよ。
もう意味のない”お殿様”にあぐらをかく者、そこに首を垂れる者を”ナンセンス”と一蹴した博は、縁側でたわむれる”殿”と未亡人の親子を見つめる。ナンセンスも家族も、すべて人と人との関係の方法だ。寅さんの小さな鯉を受け取るために庭の鯉のぼりを降ろすシーンと富者の手土産をあわてて隠す場面は呼応している。それから寅さんが鞠子に用意したものまで、”土産”が関係性に注目させるものとして、マクガフィン的に機能している。序盤のトラという名の犬からマリコという名の女性を探す物語へ誘うところまで、本当によくできた脚本だ。
そしてこの人間と人間の関係について語られた映画の最後、恋に敗れた寅さんの台詞が、さくらの口からこぼれ落ちる。

「あの人と結婚する男は死んだ亭主のことでヤキモチなんか妬かないんだろうな。

……でも…………ほんとにそんな男っているのかな」

矜持と、本音と、口惜しさと、やっぱり矜持の言葉だと思う。
そういえばとらや店内の俯瞰は今作で初めて見た気がする。
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