ウシュアイア

ザ・ライト -エクソシストの真実-のウシュアイアのレビュー・感想・評価

3.7
[あらすじ](実話をもとにしたフィクション)
葬儀屋の一人息子マイケルは、奨学金目当てで神学校に進学し、卒業後、信仰心の希薄さから司祭になることを辞退しようとするが、恩師に引きとめられる。

そこでマイケルは、今でもヴァチカンで、悪魔払いの儀式を行うエクソシストの養成講座を受けることを勧められる。懐疑心を抱きながらも、マイケルはヴァチカンでエクソシスト養成講座を受講するが、そこでマイケルが悪魔の存在に疑念を抱いていることを見抜いたザビエル神父は、彼の旧知のルーカス神父のもとへ行くよう勧められる。

マイケルはルーカス神父の悪魔払いの儀式のインチキを見抜こうとするが、悪魔の存在を認めざるを得ない状況を経験することになる。


[感想]
教義に懐疑的であった一人の若者が、神の道に進むまでの紆余曲折を描いた作品。

この作品を見て知ったことであるが、今でもカトリック教会では悪魔払いにまつわる教義があることに驚きだ。日本の厄払いやお祓いといった生易しいものではなく、精神疾患を患っているような人にやっているというのである。

キリスト教の告解がカウンセリングの原点になったように、宗教的な儀式等に、精神医学的な効用がることは認める。しかし、キツネ憑きと呼ばれる病態が日本特有のものであるように、文化結合症候群という概念が登場して、キツネ憑きにしても悪魔の憑依にしても、徐々にその存在は否定されつつあるこのご時世においても・・・・

父親にレイプされて妊娠した少女がおかしくなって、それを悪魔の仕業として神父が悪魔払いの儀式を行うものの、その後改善されず、カトリック系の病院で拘束具が付けられるが、少女は不正出血を起こしても助けられず、死んでしまうのだ。

信じていない者にとってはとんでもない人権侵害に思える。
ちゃんと精神科医に診せていれば、と誰しもが思うだろう。
しかし、この作品は、マイケルは当然こうした疑念を抱くのだが、結局、悪魔の存在、神の存在を認めざるを得なくなるというオチだ。

よくよくこの作品を見てみると、マイケルの神学校時代の恩師、ザビエル神父、ルーカス神父がグルになって、マイケルを洗脳するために、仕組んだ壮大な芝居かもしれないと感じてしまう。教義に懐疑的な者ほど、教義を否定できなくなる状況に追い込まれると、強い信仰に至ってしまう、
ということは、カルトなどでもよく見られることで、我々以上の世代ならば例を引くまでもないないことである。

まあ、この神父たちがの悪魔払いがヤラセなのかは別として、観た人は、ああやっぱり悪魔はいるんだ、と思う人はほとんどいない。レビューなどを見ると消化不良を訴える人が多いが、そこはローマなどでロケをやったり、教会側の圧力などを考慮した「大人の事情」でそういうオチにしているんだろう。

信じていない人にとっては、メッセージは伝わるはず。
(2011年5月4日)
ウシュアイア

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