つかれぐま

蜘蛛巣城のつかれぐまのレビュー・感想・評価

蜘蛛巣城(1957年製作の映画)
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その器ではない人が
その位置についた悲劇

霧のかかるシーンが多いせいか、どこかぼやっとしたイメージを持っていた本作だが、リマスター版を観て驚く。凄く綺麗でシャープになっているじゃないか。台詞の聞き取り辛さは変わらずなので字幕で鑑賞。

・魑魅魍魎ーもののけが潜む森
・血糊の跡が禍々しい開かずの間
・森が動くクライマックス
これらの名場面が(かつて見たオリジナルからは)見違えるような美しさだった。

物語はシェイクスピア「マクベス」であり、それを能の様式美で表現したそうだ。静と動のメリハリが効いた映画という印象で、馬の疾走する速さや、クライマックスで主人公を射抜く矢の速さに瞠目。

黒澤明曰く、
イギリス人の「マクベス」解釈よりも、主人公と奥方をより弱き者として描いたそうだ。黒澤作品のヒーロー三船敏郎がこういう役を演じるのは珍しいが「その器ではない人がその位置についた悲劇(黒澤明)」をちゃんと体現しているのが凄いね。