次男

きっと ここが帰る場所の次男のレビュー・感想・評価

きっと ここが帰る場所(2011年製作の映画)
4.1
「なにかが変だ。『これ』とは言えないけど。」

先日、フレッシュな青春映画を観て、「こういう映画を、ずっと当事者気分で観られたら」と感想文に残したのだけど、それは偽りもなくそう思っているのだけど、なんというか、どうだろう、程度の差は山ほどあれど、この映画を観たら、少し痛いところを突かれた気分で。

無責任に生きてるつもりはないし、税金も納めて、働いて、なんだろ、大人の通過儀礼、というか、証明書みたいなん、もろてる気してる。けど、そういうことじゃない、本質的な意味でのそれは、こんな歳食ってもやっぱり無責任で、それは痛烈に自覚がある。自覚がある、というより、逆説的に、本質的な意味で大人であると胸を張れる要素が、無い。

要は、大人のフリはできてる、ということで。僕は何かと、フリは巧いから。

例えばそれは、ルーツと向き合うことだし、過ごしてきた過去にも向き合うことだし、今いる場所を自覚することだし、もしかしたら、未来を考えることも含まれるのかな。並べると馬鹿みたいだけど、そんな馬鹿みたいなことは意外とむずかしくて、ほとんど出来てない、というより、放っておいてる気がする。いつか身に染みて考えるはず、そんな感じで。

◆◆

シャイアンは、順番と時間はむちゃくちゃだけど、きちんと手にしたんだな。だって最後、姿勢はそのままでも、見た目はまあ、おっさんだよな、あれは。ふつうのおっさん。人間に興味を持って、生きることを自覚して、ふつうのおっさん。

愕然と身につまされるわけでなく、でもふわーんとなんとなく、後ろとか足元とか前とか、見ようかな。なんて思った。象徴的な意味でだけど、僕は煙草吸ってるし。

◆◆

クレーン、ドリー多用のトリッキーで浮遊感いっぱいのカメラワーク。アーティスティックでささやかにも大胆な演出。「なにかが変だ。『これ』とは言えないけど」を見事に体現した、素敵な映像。「フューチャー」の音楽も、「パスト」の音楽も、どちらも素敵で、どちらも同じこと言ってる。カバーしてまでね。
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