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ロストボーイのnoteのネタバレレビュー・内容・結末

ロストボーイ(1987年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

カリフォルニアにある海辺の街サンタ・カーラに両親の離婚を機に母に付いて祖父の家に身を寄せるべく、遠くアリゾナからサムとマイケルの兄弟は引っ越してきた。一見、太陽が溢れ平和に見える街は、実は行方不明者が多く、街のあちこちに失踪者の情報を求めるポスターが…。

吸血鬼軍団VS子どもたち。
青春+ホラー+ジュブナイル+コメディと様々な要素のごった煮だが、上手くブレンドされたエンタメ・ホラーの佳作。
愛すべきB級映画である。

弟サムの話はジュブナイル。
サムが街で知り合ったエドガー&アラン兄弟によれば、街にはヴァンパイアが棲みついていて、ヴァンパイアの犠牲になっているという。
最初は信じないサムだったが、兄マイケルの異変に、兄弟と共にヴァンパイアハンターの真似事を始める。
新しい友達との交流、街の噂にくすぐられる好奇心と冒険心。
「少年探偵団」のようなワクワク感だ。

兄マイケルの話は青春物語。
暴走族の不良に囲われた美女に恋した兄のマイケルは、ついて行った不良のアジトでリーダーのデイヴィッドによってヴァンパイアになることを勧誘される。
イケナイと身の危険を感じつつも、一目惚れの女性の魅力に逆らえず、突っ走る青臭さはまさしく青春だ。

しかし何といっても魅力的なのは、ホラー要素を牽引する本作のヴァンパイア。
パンクなファッションの暴走族の悪ガキ達だ。
もしも現代にヴァンパイアが紛れていたなら、こうなのでは?というキャラクター設定がカッコいい。
ヴァンパイアの仲間になる=我が者顔で夜に出没するイケナイ不良になるというゾクゾクする感覚と捉えている。
闇夜の空中飛行、郊外や森の中をバイクで疾走するヴァンパイアは幻想的で美しい。
コスチュームプレイも似合いそうな美男ばかりで、「歳を取らず永遠の時を謳歌するカリスマ」というヴァンパイアの特性を捉え、古典を親しむファンにも受け入れられる要素がある。
永遠のカリスマであるドアーズのジム・モリソンのポスターをアジトに飾ってあるのも、そうありたいと願う彼らのポリシーを語っているかのようで個人的にはツボ。

貴族とは違う冷たく危ない反抗的な雰囲気の尖ったリーダー役、デイヴィッドを演じたキーファー・サザーランドがハマり役。
反抗期は一種の厭世観でもあり、本作の不良バンパイア役は抜群にカッコ良い。

後半のテイストは「グーニーズ」感覚。
ヴァンパイアになりかけの兄を救うには、親玉のヴァンパイアを倒せばいいと、知識も漫画の俗説で、体力もなく、装備も心許ない不安要素だらけの子どもたちがヴァンパイアに立ち向かう。
どう見ても無謀もいいところだが、彼らの奮闘ぶりが馬鹿らしくも可愛いらしい。

マイケルとサムの祖父の自宅に急襲を仕掛ける吸血鬼たちに、聖水の風呂やニンニクのトラップで対抗する。
子供が思いつきそうな大袈裟なトラップを
張り巡らし、トラップに引っ掛かった吸血鬼はド派手に体が吹き飛ぶ。
何だかんだで成功するのはコメディだ。
後の「ホーム・アローン」は本作の影響下にあるはず。

総て上手くいったかに思えた最後のオチもヒネリが効いている。
喜ぶ子どもたちを尻目に祖父は冷蔵庫に行き、血の酒を飲み「サンタ・カーラはいい町だが、吸血鬼が多くて…」と語る。
え?結局おじいさんも?と、ちょっとしたバッドエンドにニンマリ。

さすが職人監督ジョエル・シュマッカー。
ホラーと成長譚を上手くまとめた作品。
映画でも現実世界でも、人が成長していく過程では、仲間と共に過ごした大切な時間と、波乱に満ちた事象を越えた先にある経験が大切なのだと、微笑ましい余韻が残る作品だ。
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