nt708

野良犬のnt708のネタバレレビュー・内容・結末

野良犬(1949年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

ずっと観よう観ようと思って後回しにしていた本作。日本の刑事ドラマの礎と呼ばれる所以が良く分かった(ような気がする)。

熱血漢の若手刑事と風来坊に見えて凄腕のベテラン刑事。それを手助けする別部署の刑事や署長たち。今でこそ当たり前になった警察側のキャラクター設定の基本がここにあることを考えると感慨深い。小さな事件が大きな事件へと発展していく様子も今でこそ王道だが、その始まりがここにあることを考えるとやはり感慨深い。本作から映画の先駆者として、黒澤の実力には凄まじいことがあることを感じずにはいられないのだ。

物語もさることながら、終戦してもなおその影響が残り続ける人々の生活に感じるものがあった。何が正しくて、何が間違っているのか、、その価値観が180度変わってしまった時代を生きた人々が何を信じればよかったのか。三船演じる若手刑事のように容疑者に同情する気持ちも理解できるが、志村演じるベテラン刑事のようにセンチメンタリズムを捨て、戦争と決別する決意をしなければ自分が保てない状況も理解できる。否、理解できると言うことすらおこがましいかもしれない。そのような我々の想像も及ばない危うさがこの時代に、この日本にあったことを描いたという点でもやはり本作は評価されるべきだろう。

映画として非の打ち所がない、学ぶべき点が多い映画だった。
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