Ren

アナスタシアのRenのレビュー・感想・評価

アナスタシア(1997年製作の映画)
3.5
【アナスタシア伝説】最後のロシア皇帝・ニコライ2世の第四皇女・アナスタシアは臨時政府によって家族と共に監禁され、17歳で銃殺された。しかし、皇帝一家の埋葬場所が不明であるという事実と政府のプロパガンダに後押しされ、「アナスタシア生存説」が囁かれるようになった。以降、自らをアナスタシアだと主張する多くの女性が出現した....が、現在では、皇帝一家は全員殺害されていたことが明らかになっている。
(Wikipediaより)

※ディズニー製作ではないので間違えている方は注意!

アニメーションのクオリティ、音楽のクオリティ、歴史ファンタジーとしてのクオリティが高水準で噛み合った秀作と言って良いと思う。ディズニー作品が低迷期へと突入してしまう90年代後期に20世紀フォックスが放った会心の一撃。

一応アナスタシアのことを軽く調べてから観たけど、そういった歴史的背景の知識は一切不要だった。自分って何者なの?を探るロードムービーとして魅せる工夫が5分に一回あるし、20世紀初頭のヨーロッパの空気感はそれだけで心掴まれるエンターテイメントになる。

ヴィランはラスプーチン(cv. クリストファー・ロイド)。身を売って邪悪な魔法使いとなった彼はグロくてキモい(指が切れたりするけど、中の骨や神経が見える身体性に訴えかけるキモさもある)が、誇張されたラスプーチンとして愉快で楽しかった。悪のカリスマのような側面は皆無で、ただキモさに全振りしているのが良い。

暴走列車や嵐の船での一幕はちゃんとハラハラさせるし、冗長にはさせまいとする工夫がちゃんとあって好感が持てた。アナスタシア(cv. メグ・ライアン)側のストーリーに比べてラスプーチンサイドがファンタジーすぎるのも、緩急として◎。

自分の血筋や居るべき場所に囚われるのではなく、自ら選択していくという点ではかなり『アラジン』や『塔の上のラプンツェル』的な、言ってしまえばベタな話。だけどそんな物語を語る上でアナスタシアがきちんと魅力的に描けているし、添え物でなく選択し行動する能動的人物として存在していたのが嬉しかった。それがラストシークエンスにも効いてきますが、彼女は徹頭徹尾とても強か。

サントラも良い。エンドロールに流れる『At the Beginning』、『Journey to the Past』(アカデミー歌曲賞ノミネート)、『Once Upon a December』の波状攻撃で否応無しにいい映画観た気分にさせてしまう。いつだって、音楽の良い映画は素晴らしい。

その他、
○ タイトルバックの雲の上のカットがどう見ても『ノートルダムの鐘』。ディズニーのことは確実に意識している。
○ ディミトリが車を乗っ取るところはやややり過ぎじゃない?と思った。あそこだけ許容ラインを越えてるような。
○ 大オチで若干の消化不良。自分探しの道中で本心を獲得していく話だったのにあのオチは、ギャグだとしてもあまり本編と呼応していない気がしてしまった。あのままカメラが引いて終わりでよかった。
Ren

Ren