ギルド

仮面/ペルソナのギルドのネタバレレビュー・内容・結末

仮面/ペルソナ(1967年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

【アバンギャルドな仮想の仮装一人芝居劇場】
失語症の女優エリーサベットと看護師アルマが転地療養しに別荘へ行き、様々な変化を受けるヒューマンドラマ映画。

初ベルイマン作品です!
本作は映写機で始まり映写機で終わる演出に、サブリミナル効果のアレや血抜き映像・アニメ逆再生にフィルム焼き切れ演出…と映画の世界に外部が手を加える操作感を独特な雰囲気が展開されていってそこが良かったです。
全体的に映画そのものに仕掛けが多い作品であるのを最初5分間でおおよそ知れるので、そこから繰り出される刺激的な映像からモノクロで織り成す岩礁/湖と森の映像のどれもが見応えがあって没入出来る魅力が詰まってました。

本作は所謂ユング心理学における「ペルソナ」「シャドウ」を用いた人間の奥深くにある心情を捉えた作品で、その辺を影やカーテン/カーテン隙間・更には扉や部屋で表現しているのが面白かったです!
いわゆる映像で見えてる情報の表面に真実がある…や、どこまでが真実かが分からない…な作品の先駆け的な作品なのかなと思ったり。

カメラワークで面白いと思ったのは、転地療養しに行った時にアルマがエリーサベットに老看護師の生き方がカッコいいと話するシーンの後に入るタバコのシーン。
ここで顔を敢えてアルマとエリーザベットと重ね合わせるシーンがどこか同一人物感を醸し出してて、本作の人格の形成/抑圧という主題に沿った粋な演出だと感じました。
その他にアルマとエリーサベットの顔が交差したり徐々に顔が暗くなる演出に、尊敬している人物と徐々に外見が似始める姿…など、映像で2人の女性が徐々に同化していく姿は面白かったです。

中でも興味深いのはアルマが発する堕胎とエリーサベットの映画を観た話。
人格の話や人格を形成する話…など、本作は様々な人物が人生で演技するペルソナの話を中心に行う。
面白いのは、ペルソナが様々な環境下で使い分けている多層的なものである、というのをカメラワークやセットデザインで表現しているところかな。
影やカーテンで人格の使い分けや抑圧されるシャドウ的なもので表現したり、転移して顔が同化したり…それによって同一人物で片方が架空の人物である、とか転地療養を通じて仮面が崩れて抑圧されたシャドウが曝け出す、とも取れる。

きっと、本作はそういう要素を含みながらも「人格/演技の使い分け、をする側・される側の影響」の原石のような作品だと感じました。
ある側面を見た人が感じる姿と見られる人の想いが一致しないように…アルマが発する「芸術は人を慰める」で芸術で人の心を左右するように…
本作はそういった普遍的な要素を演出や映画の外側で表現している。
それだけでなく、見た人・見られる人が一致すると今まで付けたペルソナが崩壊する表裏一体を織り成す。
そこが素晴らしい作品だと感じました。
(そこら辺が多分、フィンチャー「ファイト・クラブ」やエガース「ライトハウス」などの後世の作品に影響されているんだと思う。)

そういった意味で本作はとてもフレッシュな映画体験を出来た一作で良かったです!
本作でベルイマン作品を観たけど、「野いちご」「第七の封印」「狼の時刻」も気になる作品なのでAmazon Primeなり映画館のベルイマン特集で是非とも観たいなーと考えてます。
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