唯

グランド・ホテルの唯のレビュー・感想・評価

グランド・ホテル(1932年製作の映画)
3.8
「グランドホテル。人々が来ては去ってゆく。何事もなく」

ホテルは密室でプライベートな空間の集合体であるから、群像劇として成り立つよね。
一流の高級ホテルなわけだけど、金持ちだけでなくそれに仕える者やそれに媚びる者、庶民も出て来るところがミソ。
あらゆる階層のものを描くことでより奥行きを生んでいる。

ホテルマンとの交流ではなく、客同士のコミュニケーションが主なのはアメリカ人ならでは。
現代日本じゃ見ず知らずの人との場面なんて描けない。

「太陽…イタリアでも輝く空が見える」
男爵が殺されたことを知らずに彼との未来を想像する儚さ。

群像劇は一人一人を深掘りしないからこそ、その先に続く時間やその奥にある感情を想像させる。
余韻が深く自由だから、好き。

人と人とが交わり交錯するから、喜びも悲しみも生まれる。
一日というかチェックインからチェックアウトまでの半日の出来事なのに、その短い時間でも人生は大きく左右されることがあると教えてくれる。
唯