「ニューシネマパラダイソ」
はじまってすぐにテーブルに巨大なレモンがいっぱいあるのが目についた。
レモン→シチリア→イタリアーノとなるわけである。
ライムスター宇多丸が冗談半分に「ニュー・シネマ・パラダイスが好きっていう人は自称映画好きだ」と言ったのは有名だ。
私もそういった側面があるのは否めない。
だって口を揃えてそればっかり言うからだ。
そんなのは楽器店でギターの試し弾きをする時に、レッド・ツェッペリンの天国への階段を弾くようなもんだ。
なぜかこういう事を言う人は批判されるが、それは聞き飽きたということである。どの目線でいっとんねんと言われれば返す言葉もないが、そういった暗黙の了解すら知らない人はそもそもそんなに映画好きじゃないんじゃないか?といった事だ。
作品に罪があるわけでもなく、作品の批判もしていない。それでも「ムキーッ」となるような人は1980年がずっと最前線だとおもって生きている人だ。
そういう事もあってか私はどこか意固地になって本作を避けてきたが、やはりエンニオ・モリコーネの曲や、編んでいたものがぴろぴろ~となって止まったことで距離感が伝わる手法だとか、ちょっと画面が切り替わると一瞬にしておとなになっている場面なんかは古典的であるけれども言葉で説明しない映画らしさがとても素敵であった。
ストーリーも、おじちゃんとこどもの関係に嫌味がなく、少しばかりつくりものな話っぽさはあるが不快にはならない。
また完全版のあらすじをみるに、エレナとの別れはラ・ラ・ランドに通じるものがあり、なんとなくラ・ラ・ランド好きとニューシネマパラダイス好きが一致するのも頷ける。
だが、ちょっとばかり棘がなさすぎる話なせいもあり、スポイトおじさんが大活躍する「ドント・ブリーズ2」を今年ベストにあげている私とは価値観が違うのは確かだ。
では、目の見えなくなったアルフレードが実は凄腕殺人マシンでしたといった映画が良いのかというと、それはまたべつのはなしである。