tanayuki

刑事ジョン・ブック/目撃者のtanayukiのレビュー・感想・評価

3.8
アメリカで異文化との接近遭遇を描いた作品というと「ダンス・ウィズ・ウルブス」「レヴェナント」「荒野の誓い」などネイティブアメリカンとの交流を描いた新しいタイプに西部劇が思い浮かぶが、テクノロジーを拒否して昔ながらの自給自足の生活を営むアーミッシュとの出会いを描いたこの作品も、広い意味では同じカテゴリに入れることができそうだ。

もともと閉鎖的・排他的なムラ社会全般に対して懐疑的で、素朴な農民の暮らし云々という話は眉に唾をつけて聞くようにしているが、2020年1月に出たこの告発記事でアーミッシュに対する見方は180度変わってしまった。関係ないとはいえ、映画の世界を素直に受け取れない自分がいる。

→ 閉ざされたアーミッシュ社会、彼らが隠してきた「恐るべき秘密」https://www.cosmopolitan.com/jp/trends/society/g30559443/amish-abuse-incest-200117-hns/

人間の性を否定する禁欲的(≒非人間的)なキリスト教によってどれだけの人が歪められ、貶められ、虐げられてきたのかを思うとやるせない。カトリック教会による性的虐待事件の告発も同じ文脈でとらえている。

アーミッシュは読書もダメ、音楽もダメ(賛美歌は除く)らしいが、ジョン・ブックとレイチェルがラジオから流れるサム・クックの「ワンダフルワールド」を聞きながら踊るシーンがある。そもそもアーミッシュじゃないケリー・マクギリス(翌年にはトップガンでトム・クルーズと恋に落ちる教官役!)がアーミッシュを演じるのはどうなのよ、みたいな余計なことまで頭をよぎって、なんともむずかしい世の中になってきたものだ。

△2020/09/06 Apple TV登録。スコア3.8
tanayuki

tanayuki