むっしゅたいやき

去年マリエンバートでのむっしゅたいやきのレビュー・感想・評価

去年マリエンバートで(1961年製作の映画)
4.0
アラン・レネ監督作、ヌーヴェルヴァーグの傑作と謳われる作品です。
前情報無しで鑑賞しましたが、各人自分なりの見解を得て満足するタイプの作品でした。

物語の舞台は、バロック調の豪奢で広壮なホテル。
壁と大理石と、黒っぽい絵と栗の形の鏡、飾り付きのドアが立ち並ぶ、静かで人気の無い(余りに繰り返されるので、覚えてしまった…)館です。

迷路を思わせるこの館で巡り会った、男女の物語では有るのですが、他の方のレビューにも在る通り、フラッシュバックとフラッシュフォワードがシームレスに繰り返し挿入される為、観衆までもこの迷路の様な物語に惑わされます。

とは言え、何が何に仮託され、何がデフォルメの上で描写されているのかを推理しながら鑑賞を行えば、自ずと本筋は見えて来る様に思えます。
駒取りゲームの存在がヒントなのでしょう。

何処か無表情、無機質で不気味な人々の描写は、『夜と霧』で金網にしがみついた死体を映したアラン・レネらしくも有りますが、本作は舞台を閉鎖的なホテル内に設定し、更に先述の演出を加える事で緊張感と不安感を与える事に成功しています。

個人的にはプロット有りきで観衆を試す様な作品は好みでは無いのですが、練られた脚本と多岐に渡る不安感を煽る演出、ソリッドで構成の確かなショットには唸らされましたのでこの評価とします。
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