空海花

去年マリエンバートでの空海花のレビュー・感想・評価

去年マリエンバートで(1961年製作の映画)
4.2
アラン・ロブ=グリエの脚本をアラン・レネが監督した心理ドラマ。
撮影サッシャ・ヴィエルニー
音楽はフランシス・セイリグ
ピエール・クーロー、レイモン・フレーメンが共同で製作を担当。
ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞受賞。
黒白・ディアリスコープ。

マリエンバートはチェコにある温泉保養地でドイツ語読み。
黒澤明の『羅生門』をモチーフにした作品で、『羅生門』の原作の一つである芥川龍之介の『藪の中』が物語の下敷きとなっている。

バロック調の凝った装飾の施された豪華なホテルで富裕層たちがパーティーに興じている。
ある男が、夫と滞在中の夫人に「去年マリエンバートで会いましたね」と話しかけるが、彼女は思い出せない。
だが男の話を聞くうちに夫人は記憶を取り戻していく─

天井を舐めるように進んでいくカメラ
果てしない廊下が続く
斬新な構図に訳のわからないまま引き込まれていく。
ヒロインのデルフィーヌ・セイリグが纏うココ・シャネルの衣装がモノクロならではの美しさで彩られる。
白いドレス、黒いドレス、
白い部屋、黒い部屋はモザイクのように切り替わる。
衣装や色を追いかける。

アラン・ロブ=グリエの映画は正直わりといつもお手上げ(笑)
(本作は脚本のみ)
それでも映像美と観念的な言葉になぜか入り込んでしまう。
『羅生門』がモチーフになっていることを知って少し助けになる。

「あの囁きは沈黙よりひどい」

男が事実とする物語と、女が事実とする物語があって、食い違っている。
そこに女の夫による証言と現在進行形の物語が重なる。
それらが相互に混ざり合い、誰の回想なのかわからなくなるほど緻密に繋ぎ合わせられている(ロブ=グリエ談)
そこには時間軸も取り払われる。
物理的にも心理的にも迷路のような回想劇。

出演者たちも今何を演じているのか混乱したらしい(笑)
衣装やセットは整合性があるらしいのでそこに注目して観ると、何となく繋がっている気にはなってくる(理解はしていない笑)

舞台劇のように周りが静止したり面白い演出も。
庭園のシーンが素晴らしい。
ラストも委ねてくる系なので結論は出しづらい。
難解作品がお好きな方、
映像美、文学的作品がお好きな方には一度は観てほしい作品。


2022レビュー#19
2022鑑賞No.31


ほのぼのと癒されたい今日この頃…
夜のお供になるような何かいい漫画とかありませんか?(突然すみません😅)
空海花

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