こたつムービー

青髭八人目の妻のこたつムービーのレビュー・感想・評価

青髭八人目の妻(1938年製作の映画)
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これは凄い映画だな。
二部構成の落差、しぼみっぷり、なにより脚本がキテる。パジャマの展開が物凄く一気に掴む。脂の乗ったブラケット&ワイルダーの脚本はほんと科学的だ。そして師匠ルビッチによるワーク。

二部構成の落差と書いたが新婚旅行からのピークアウトが顕著で一気に「どっちにも肩入れできない」観察映画と化す。実のところゲイリークーパーはいつも通りザルだしコルベールさんもどうなの?って配役の魅力不足も手伝うんだが、ちょっと頭冷やして冷静に考えてみよう。


資本主義への風刺


だよね、この映画って。
この場合「両人」ともに肩入れできない、共感できないのはある意味で狙い通りだと思える。軍配としては「逞しくクリティカル」なコルベール女史にあがるわけだが、彼女もちゃんと「侯爵の子」という設定を忘れてはいけないのだよ。ゲイリークーパーに至ってはデパートの出だしから「高圧的」でマッチョなアメリカンに設定されていて、これは全てが狙いと考えて差し支えないだろう。ルビッチとワイルダーは異邦人としてアメリカを捉えているね。

冷静にならず感情で言えば(?)、冷え切った夫婦関係に凍てつくのみよ。
しかも金あるとタイヘンねー、であり、同時に金がなければこの関係も生まれてないって皮肉ね。ちょっとジョニーデップを想ったかな。
ラストが白けるのは強引にハッピーエンドに舵を切ったからであり失敗そのものだが、凍てついて終わっても仕方ないのだろう。すごくモダンな作品だ。

「私はマフラーのみです」

語尾だけ泳いで訊きにくるカット最高!