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君の膵臓をたべたいのこたつムービーのレビュー・感想・評価

君の膵臓をたべたい(2017年製作の映画)
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追憶映画フェアは混迷迷走しつつ、いつのまにか「余命系」をさまよっている。

で改めて言えば、余命系映画とは予め感動作=話題作(フィーバー)を生みやすい構造をしている。青春時の「人命」を商材として扱う手前シンパシーとカタルシスを得やすく、かつ、批判しづらさすら担保するからだが、その意味では(実は)戦争映画と一緒だ。

あえて余命「エクスプロイテーション」と言わせてもらうと、そのまさに「批判しづらさ」の関所みたいなものがあって、死を担保にしている分、関所の取り締まりはかなり緩いのだが「そうは言ってもさすがに破綻してる・だめでしょ」感との格闘がたまに生じるんだよな(この点も戦争映画と同じだ)。

・・というのが長い(意地悪な)前置きだが、ではこの映画はどうだったか、というと単純で、


「通り魔いらね」


って感想しかない。
それまでは関所を余裕でパスしますよ。フェリーニの「道」以来ヒロインは真っ直ぐであればあるほど感動を呼ぶわけで、この映画のヒロイン(浜辺美波)もちゃんと真っ直ぐだし、受け手の「ぼく」(北村匠海)も慎ましく誠実な演技で物語上苦にはならない。が、事件は物語の4分の3を通過した時点で起こる。「まじでソッチ、要らねえ」という事態に。

そのまま衰弱してゆく主人公でよくね?

それもあってないような、うっすーい、実存感のないほぼ空気のような事件で、ホント展開の為の「記号」でしかなく一気に萎えた。

原作はベストセラーらしく読んでないからなんとも言えんがそれでも言っちゃえばこの「君の膵臓をたべたい」ってタイトルも、

インパクト狙いの釣りとして充分

な感じだ。見ると当初このジヅラだけで受ける印象と違い、膵臓の病ってだけでさほどリンクはしない。が、たまに思い出したように膵臓をたべるっつーセリフがでてくるので、気持ち悪い。通り魔といい、この(はったり気味な)タイトルといい、必要ない。もっとストレートの直球勝負じゃダメなの?

品性で言っても初めから「死ありき」でヤル気満々に進むので、ある意味「余命」を使った作り手の暴力と開き直りを感じ、そのくせ事件に逃げるので、個人的には品を感じない。最後の図書の謎解きもいかに「Love Letter」がエポックメイカーかを感じ入ったりする。

で、こういう批評性も「余命系」には野暮だろうしずるい構造なんだよな。
良い面ももちろんあり、学園ものの匂いはマストでちゃんとする。答え合わせでしっかり承認欲求もクリアされる丁寧なつくりであり(?)、若気にみれば充分満たしてくれる作品だろう。