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約束の土地のslowのレビュー・感想・評価

約束の土地(1974年製作の映画)
4.0
決してこのジャケットは、変態が突っ立っているわけではない。

19世紀末のポーランドでは、繊維工業が盛んだった。とは言え潤っているのは搾取する側だけ。労働者達は過酷な冷遇にその日暮らしもままならない。この状況を打破したいと立ち上がった青年3人の友情と成功の物語。

女性を軽視する発言をし、批判を受ける人っているよね。金持ちとか権力者とか。本作でもその思考を持った富裕層が描かれていたり、従業員を駒以下に扱っていたり。その酷さを前半ではじっくりと観客に見せつける。劇場で馬鹿騒ぎしているシーンなんてブニュエルの狂気を想起させた。後半に向けて、青年達の奮闘が描かれる。もちろん簡単にはいかないのだけれど、何がきっかけで事態が好転していくかわからないもの。しかし、そうなっても転がっていると言うことを忘れてはいけない。

見応えのある社会派映画だったけれど、もう少し3人のエピソードなど見せてくれたらより入り込めたかもしれない。するとさらに長尺に…無理か。田舎の風景はとかく幻想的であり、町と比べると天国にすら見えた。工場内の様子も迫力があり、町の建物は実際にあるものを利用したそうで、歴史を感じられるのも嬉しかった。

情熱の炎はとても眩しい夢のようだ。しかし、不自然な風がそれを煽っていることも忘れてはいけないのだ。
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