Dachiko

アメリカン・サイコのDachikoのレビュー・感想・評価

アメリカン・サイコ(2000年製作の映画)
3.5
人を殺したい、と感じる人は世の中に多くいるだろう。大都会東京に住んでるのならなおさら多いのではないか。世界1位の人口密度を誇る新宿駅では出勤中一体何人の人が脳内殺人予告を犯しているのだろう。

1つ言えるのは。彼らは決して実行には移さない、ということである。リスクが高すぎるからだ。

本作の主人公はどうだろうか。彼にとってはそんなリスクなど自己尊厳に比べれば小さいもので、いとも容易く殺人を犯すのか、それとも新宿駅のサラリーマンのように脳内殺人を繰り返していただけなのか。

心をモヤモヤさせる作品。鑑賞後はひたすら考えるのがいいと思う。

狂っているのは彼か世界か。

この話はどこにでも起こりうる話である。特に人が多ければ多いほど有り得る話だ。いうまでもなく東京などはこの物語の舞台になりうる。

資本主義という名の下に、大勢の人間が身を粉にして、すこしでも多く稼ぐために働いている。それはいいことだと思う。しかしその流れの中でみんながみんな同じ方向へ向かなければならない。就活生などの恰好を見ればわかるだろう。姿形がみんな同じなのだ。

その中でどう自尊心を保てるだろうか。今作の主人公のパトリックはそんな右向け右、面倒ごとには我関せず、を貫く社会の中で必死に自己を保とうとしていた。その最たる叫びが最後の電話だろう。

クリスチャン・ベイルの怪演、そしてジャレッド・レトが脇を固める。ストーリー面でも演技面でも文句はない。あまり友人に勧めることのできない怪作である。