shibamike

ナイト・オン・ザ・プラネットのshibamikeのネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

普段、ちっとも意識しないけれども我々は地球に暮らしている。
 ロサンゼルス、ニューヨーク、パリ、ローマそしてヘルシンキ。この5つの都市それぞれにて、タクシーに乗り合わせた乗客と運転手のショートストーリー5つ、というガーエー。

どの話も示唆的で、色々考えさせられた。
 5つのストーリーの共通項目として、立場的に弱い?方が結果的に強者へ気づきや戒めを与えるやうな構成という気がした。立場や考えがアベコベになる感じ。


1. ロサンゼルス
小娘タクシードライバーがバリバリのキャリアウーマンを客として拾う。
 小娘を気に入ったキャリアウーマンが小娘に対して仕事のスカウトするのだけど、「いや、私には私の人生のプランがあって、華やかな仕事だからとか人気職とか関係ない。」
といったやうな小娘の風貌からは想像もつかなかいやうな地に足の着いた芯のある考えをお見舞いされ、キャリアウーマンは面食らい、自身の身の振り方を考えさせられるのであった。
 ウィノナ・ライダーがとにかくイカす。「あたしがウィノナ・ライダーよ。文句ある奴はどっからでも掛かってきなさいよ!(ノーパンM字開脚クパァ)」と言わんばかりで、ますにウィノナ・ライダーここにありという鮮烈さだった。
 端正な顔つきに意外と小柄で、なのにダボダボボーイズファッションで、吸い過ぎのタバコとガム。腰から懐中電灯ぶら下げるストリート感に世界中のミニシアターに通うサブカル好きの若者が参ったのだらうなと想像した。

2. ニューヨーク
東ドイツからニューヨークへやってきたオッサンのヘルムート。ベルリンの壁崩壊の影響をモロに受けてか何なのか、何とかタクシーの仕事にありつくも、土地勘もなければ、運転も覚束ない。
 そんな頼りないヘルムートが拾った客がパリピ野郎のヨーヨー。運転が下手なヘルムートを見兼ねて、「もう、俺が運転する!」と言い放ち、ニューヨークにも横山やすしがおった!と自分は驚いた。
 運転手と乗客があべこべになりながらも、短い運転時間中に打ち解ける2人。ヘルムートは生活していくのまだまだ心細いだらうけど、しぶとくやっていくのではなからうか。

3. パリ
コートジボワール出身の運転手が盲目の若い女性を客として拾う。
 コートジボワールの運ちゃんは直前にカメルーン人から馬鹿にされていた。からかだうかはわからないが、盲目の女性客に興味本位からか話かける。
「目が見えないと色々不自由だろ?何?映画へ行くのが好き?見えないのに行っても意味ないだろ(笑)男と寝るときも見えないと困るだろ(笑)」
 完全に女性を見下すのだけど、女性の方もなかなかの手練でビシバシやり返す。
彼女は「音を感じる、色を感じる、映画を感じる、相手の皮膚の穴1つ1つを感じる。だから、あたしには全部わかるのよ。」
みたいなことを言うのだけど、負け惜しみでもなく本心だったのであらう。
 最後は目開きの運ちゃんに手厳しい結末。

4. ローマ
今までのパートは印象的な気づきや戒めがあっても、それはあくまでも登場人物に限った話という側面が強いやうに感じた。
 が、このローマのパートでは我々観客にも可能で実践的な気づきや戒め、教えが複数あり、非常に実用的なパートだった。
 簡潔にまとめると、
・カボチャはアリ
・羊はもっとアリ
・義姉は一番アリ
ということであった。
カボチャは堅さうである。据置き型のカボチャホール。
 自分は明日、イトーヨーカドーでカボチャを買う。野菜売り場でカボチャを見つめ、テント張っている中年がいたら、それは自分である。
 自分が思うにカボチャや羊の奥で果てた刹那、ロベルト・ベニーニは「Life is Beautiful!」と絶叫したんじゃないだらうか。

5. ヘルシンキ
酔っぱらい3人を乗客として乗せたところ
、乗客の2人(残りの一人は爆睡中)が「不幸だ不幸だ」と余りにも喚くので、内容を運ちゃんが聴いたところ、「何だそれくらいのことで不幸と喚くのか」と言い放ち、運ちゃんの不幸話を聴いたところ、ガチの不幸話で、酔っぱらい達がシュンとして解散する、という話。
 自分はそもそも運ちゃんの話が本当かだうか怪しいと疑った。しかし、もし運ちゃんの話が本当なのであればあんな見ず知らずの酔っぱらい達に聞かせて欲しくない。彼らも聴いてる時は涙を流して感極まっていたが、一旦到着すれば鼻歌まじりの朝帰り帰宅である。そんな一時の雑談に使うやうな話と思えなかった。
 が、真相はわからない。運ちゃんのみぞ知るである。とにかく、あの早朝の酔っぱらって二日酔いでダルくてかったるい感じがラストシーンからは強烈に追体験させられる思いであった。


柴三毛「夜に観るのにピッタリな良作であったなぁ」
と心軽やかに明るくなった場内を立ち去り、
UPLINK吉祥寺のロビーにてスタッフ数名にパワハラ言動をしつつ帰宅。
 カメルーンとコートジボワールって仲悪いんか?と気になりググったところ、ワールドカップの記事ばかりヒットして何もわからなかった。
 よくわからないけれど、とりあえずガンバ大阪のエムボマを応援するのをやめやうと思った。エムボマ、古い?じゃあエトーを応援するのをやめやうと思った。エトーも古い?じゃ知らない。

横山やすし「茶碗蒸しかジャームッシュか知らんけどやなぁ、正味の話、怒るでしかし!」


タク三毛 夜中の一句
「タクシーに ほとんど乗った ことがない」
(季語:タクシー→セクシー→小泉進次郎→冬)
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