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これは映画ではないのBaadのレビュー・感想・評価

これは映画ではない(2011年製作の映画)
4.2
う~ん、やられました。
多少イランの文化や暦についての知識のある人なら、これが入念に考えぬかれ娯楽性にも配慮された風刺映画だという事がわかるでしょう。

にしても、国外に出たらふつうに映画監督として映画を撮っていけそうな監督に限ってイラン映画をとる事にこだわって低予算映画をとり続けているみたいにみえるのは何故なんだろう。

ナデリは芸術映画にこだわらなければ、パナヒはイランで映画を撮る事にこだわらなければ、普通に大衆性のある面白い映画をもっと撮れそうな気がするのだけれど。
そちら方面に能力のある監督ほど、作家性にこだわるのかしら?

とはいえ、作中に出てくる既に書かれた脚本、映画よりラジオドラマにした方が面白いような気がした。それだと対外的なインパクトは薄くなりそうだけれど。

にしても、「自由な国」アメリカのベン・アフレックより不自由で自宅軟禁中のジャファル・パナヒのほうがイランを題材により自由で情報量の多い映画を撮ってしまっているのは面白い。『アルゴ』を見ても当時のイランについての情報は歪んだ形の僅かなものしか伝わってこないけれど、この映画を見れば今のイランのある側面がほぼ理解できる。

表現の自由ってなんなんだろうな、としばし考え込んでしまいました。
(これは傑作映画です 2012/12/12記)

このへんが見所
2012/12/18

パンフレットがあまりに不親切だったので。

> 多少イランの文化や暦についての知識のある人なら、これが入念に考えぬかれ娯楽性にも配慮された風刺映画だという事がわかるでしょう。

理解するポイントは暦なんですね。

イランの新年は春分の日から始まります。
3・11のニュース映像を監督は見ているので、3月11日から数日した新年にまつわる花火(字幕では火祭りと訳されていますが、一種の年中行事でしょうか?)がこの映画の重要なモチーフになっています。それがイスラム教的な行事ではないので、イラン政府はそれを規制しようとしているというニュースが3・11のニュースの直後に流れる。
そのニュースを使って、サスペンスを盛り上げているのが大きな演出のポイントとなっています。
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