わたふぁ

第三の男のわたふぁのレビュー・感想・評価

第三の男(1949年製作の映画)
3.9
第二次世界大戦後、米英仏ソの4ヶ国の統治下にあったウィーン。アメリカ人の売れない作家ホリー・マーチンスは、親友のハリー・ライムから仕事を依頼されてこの国にやってきた。しかしアパートを訪ねるとハリーは前日に交通事故に遭い死亡したという。葬儀で会ったハリーの知人たちや周辺住民に話を聞くと、不可解なことが多かった。
即死という者もいれば、意識があって話をしていたという者もいる。突然の事故だというのに現場にハリーの複数の知人が居合わせているのもおかしい。彼らが遺体を動かしたようだが、2人ではなく3人だったという説もある。
ホリーの知らぬ“別の顔”がハリーにはあったのか、悪い噂ばかりが聞こえてくる。不可解な点が多くあり、ホーリーは事故ではなく他殺の可能性を探り始める。すると第二の事件が起こってしまう...。

言葉が通じないこともしばしばある外国で、いわば旅行者の男が、親友が巻き込まれたらしい事件の真相に迫るため、帰国を先延ばしにして自力で捜査する、という先の読めないプロットが面白い。ホリーはわりと他人を信用しがちで危なっかしいというキャラ設定もいい。
ストーリーが新展開を迎える意外なタイミングも、光と影を使った演出も、トリックが効いている。オーソン・ウェルズの、数秒間だけであれほどまでに印象づける顔もない。端正な顔立ちながらズル賢さとか青さを内包した表情から目が離せない。やっぱりこの人、圧を感じる唯一無二の存在感。

友情に限ったものにとどまらず、ストーリーにロマンスを加えて複雑化させるアンナの存在も大きかった。終始、負けん気が強く、凛としていて、ラストシーンの最後の表情までそれが貫かれていて印象的だった。