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君たちはどう生きるかのdm10foreverのレビュー・感想・評価

君たちはどう生きるか(1950年製作の映画)
3.7
【昨日までの生き方と今日からの生き方】

祝!第96回アカデミー賞長編アニメーション部門受賞!!
ということで、今回は早速本作のレビューをしたいと思います!!
・・・といいながら、実は「同タイトルの別物」です(笑)

別に今日を狙っていたわけでもなくて、鑑賞自体は1月だったんですが中々指が進まず・・・。
そんな折に宮崎監督の快挙の一報。
まさにレビューを書くのにこんないい機会も滅多にないだろうということで書いちゃいます。

最近・・・といってもたまにですが、Youtubeで古い映画を探すのがちょっとしたマイブームになってます。
ホントは外国の作品なんかも観てみたいんだけど、字幕機能が使えない動画だとやっぱり言葉が分からなくて・・・。
たまに東南アジアの映画なんかもアップされているんだけど、流石に英語でもなくなるともう完全にお手上げです(チ~ン)

ってな感じで、やっぱり「日本人ならお茶漬けやろ!」と、かのラモス瑠偉氏が国連で歴史に残る名スピーチをしたとかしないとかという逸話もあるように『まずは邦画だろう』と。
というところで、日本のかなりレトロな作品をガサガサと漁って見つけたのがこの作品でした。

お気づきの方もいると想いますが、ついこの前公開され、さらには本年度のアカデミー賞長編アニメーション部門でもノミネートされて大きな話題となった「君たちはどう生きるか(宮崎駿監督)」と同タイトルの作品です。
モチーフとなる原作は同じですが、それを別の監督が別のアプローチで映像化した作品なんですね。
というよりも、この作品の方が原作に沿った内容で描かれているので、宮崎ver.のような難解さはなく、至ってストレートに「人生哲学」について語られるので、見やすいと言えば見やすいかな。

まぁなんせ今から60年以上も前の作品なので、今とは価値観なんかも微妙に違うところはありますが、それでも少年が「気付き」を得て「自分とは?」「他人とは?」「社会とは?」というところに思いを巡らせるという経験は、いつの時代であっても大切なことだと思いますし、そういう時に「先人として生きている大人」が果たす役割というものがいかに大きいものかということが改めてわかります。

この物語は「友人との人間関係」や「社会の中の自分」、「物事を正しく見つめる視点」など、少年期~青年期にかけて誰しも一度はぶつかるであろう問題について、主人公コペル君の目を通して考え、そして「気付き」を得ていくという内容になっています。

決して宮崎版を否定するということではありませんが、やはり宮崎監督の作家性(クセ)もあってか、ファンタジー色が結構強いので、本来原作に内包されているメッセージまで辿り着けなかったという方もいるかと思います。
本作ではそういう「色」はないので、逆を言えば物足りなくも感じるかもしれませんし、最終的には個人の好みというところに落ち着いてしまうのかな・・・とも思います。

主人公のジュンイチ君(コペル君)は学校生活や友人関係の中で様々な疑問や問題にぶつかっていきます。
そこで、彼と同居するおじさんから「大人になるということ」について色々なヒントをもらいながら、自分の中でなにかが変わっていくのを実感していくっていうストーリーなんですが、これって大なり小なり誰しもが経験するようなことで、少しずつ大きくなっていく集団の中で生活しながら、それまでの「自分中心に回っていた世界」から「自分も世界を構成するパーツの一つ」ということを認識していく過程なんですね。
この過程こそが「天動説から地動説へ」でありコペル君の名前の由来でもある。

そしてそこでの経験の中で「こうなりたい自分」と「今の自分自身の現在位置」との間にあるギャップを知ることになる。

でも、自分の中にある理想に中々近づくことが出来ずに悶々とするコペル君。
遂には友人を裏切ってしまう形になってしまい、彼は高熱を出して寝込んでしまう。

どんなに失敗したとしても、それによって何かを失うことになったとしても、自分自身がものを考え、そして実践することにこそ意味がある。

戦う事も勇気。
謝ることも勇気。
前に進むも、後ろに退くもまた勇気。

生きていくということは「勇気の連続」なのかもしれない。

いくつになっても、人間は「今日よりも素晴らしい明日」を願って眠りにつく。
83歳になってもなおクリエイティブの世界の第一線で活躍し続ける宮崎駿監督には改めて敬意を表したい。
あっぱれ。


・・・そして、奇しくも日本にとっては忘れられないもう一つの意味を持つ「3月11日」にあって、我々はその言葉の意味を今一度考えてみるべきなのかもしれない。

さぁ『君たちはどう生きるか』
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