ぐるぐるシュルツ

ロリータのぐるぐるシュルツのレビュー・感想・評価

ロリータ(1962年製作の映画)
3.6
ロリータを自分のものにしたい。
ロリータ自身のものにもさせたくない。

〜〜〜

キューブリックの初期の有名作品の一つ。
彼の天才的な「構図の魔術」はまだ
あんまり十分に発揮されていないように思えますね。
ただ、それでも、
最初の下宿先の家の階段のショットは面白かった!
本来人々の目線としてあり得ないところにカメラ視点を置いているのに、それで違和感がなく、むしろカットもなく一階二階を行き来するカメラで、一層のめり込ませる。
これ少し崩れると、
ドリフのコントを見ているようにもなると思うんですけど、
この屋敷自体が舞台セットであることを観客にはギリギリ思い出させない、
動きのある絶妙なバランス感で、流石です。
この延長線上に、
『2001年宇宙の旅』での、
ゆっくり動かすおもちゃを、あたかも超高速で漂う巨大な宇宙船に思わせる、どエライ映像効果とかがあるのではないでしょうか。

物語に関していえば、
これもキューブリックお得意の
救いようもなく観客を置き去りにしていく
ある種の異常性は薄めと感じましたが、
当時の小児性愛って今よりもっと常軌を逸したことだったのかなぁと思えば、納得。
現代では、ロリコンというワードもそうですけど、なんとなくコンテンツの中で触れますもんね。

〜〜〜

ハンバートはロリータを自分のものにしたくてしたくてたまらない。
諦めきれず散々なことをしでかすものの、
最後は意外とあっさり諦めて、
クィルティを殺す方向にシフトする。
子供を身籠もるロリータに直面して、もはやハンバートが欲していた《ロリータ》は損なわれてしまった、そして、それはロリータ自身ももう持っていないと気付いたのかもしれません。

それでは、
ロリータの持つ《ロリータ》とは
一体何だったのでしょうか。
それは、
ハンバートがたまたま異常な性癖を持っていたからこそ見抜いたものなのでしょうか。
あるいは、もっと普遍的なもの?

庭でビキニを着ているロリータの登場シーンがあんなにも人々を惹きつけるところに、もしかしたらそのヒントがあるかもしれません。