円柱野郎

許されざる者の円柱野郎のネタバレレビュー・内容・結末

許されざる者(1992年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

伝説の悪党だったウィリアム・マニー。
ある日現れたキッドと名乗る若者に、賞金稼ぎの話を持ちかけられるが…。

クリント・イーストウッドが描く西部劇の集大成だが、しかしそこで描かれるドラマは派手なものではなく重い。
序盤、初老に差し掛かった伝説の悪党は、すでに馬に乗るのも這う這うの体で、何かあれば落馬もするし「大丈夫かいな」といった感じなのだけど、このへんはイーストウッドなりのジョークだろうか。
シリアスな話にあっても最低限のバランスだけど、ウィットというよりはニヒルな感じかな。

マニーはここに至り、自分のそれまでの非道を正面から受け止めて生き、自分を真人間にしてくれた亡き妻を思い、仲間のために復讐の鬼になる男。
いや"漢"だ…。
でも渋いけれど、むしろ修羅道から抜け出せない運命にあり、それこそが決して許されることのない、過去を背負い続けて生きなければならない男の姿でもある。
とてつもなく渋いが…。
初めて人を殺したというキッドが泣いたとき、「殺し」というものが非情だと語るマニーだが。
それまで粋がっているだけのキッドには何も言わなかったという事にも、言葉ではない重みを感じるよね。

この作品においての"敵"は保安官のリトルビルなわけだけど、個人的にはこの保安官が真に悪党だとは思わなかった。
彼は彼なりにこの町の秩序を守ろうという信念があったわけだし、無法のはびこる時代で力による正義を体現していたとも思える…。
だがそれゆえに容赦がなさ過ぎたのかな。

プロローグとエピローグで、一見物語と分断しているように思える妻の母の話が、マニーという人となりの物語にぬくもりを与えてくれる。
マニーは良い妻を持ったのだ。
円柱野郎

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