ソラアユム

マンダレイのソラアユムのレビュー・感想・評価

マンダレイ(2005年製作の映画)
4.6
ドッグヴィルの一件から、数年後。グレース(ブライス)含むギャング一行はアラバマ州のマンダレイで黒人女性の助けに応じる事になるのだが‥‥






前作『ドッグヴィル』に引き続き人間の本性を無視した観念的な道徳の無意味さを描く。
舞台となるマンダレイでは、廃止されたはずの奴隷制度となんら変わらない規則で白人が黒人労働者をぞんざいに扱っていた。

前作より面白かったです。
主に良かった点は二つ。

まず、前作終盤でグレースはある人物に彼女自身の「傲慢さ」について指摘されるんですが、
それが今作では前作より克明に描かれていた事。

グレースが自らの権力を振りかざし自分で自分の首を絞めていく様が上手く描かれていたと思います。
言っている事は至極まともな事なのに全く共感できないのが凄い。
これはマンダレイという特殊な環境下でこそなせるワザですね。


そしてもう一つが前作に引き続く人間の「本性」について。
今作では全体的に極端になり過ぎることなく、共感できるのが良かったと思う。

これまで「規則」に縛られた人間が、その抑圧から解放された時、何を望むのか?
そして自由とは、平等とは何か。誰もが幸せになれる世界を追求するのは当然です。万人に共通する夢だとも思います。
その理想を邪魔するのは、人間の「本性」である‥今作では少なくともそう言っているように感じました。
悔しいが、そう感じずにはいられなかったですね。

正直、見ている最中頭が痛くなってくるが、人間の本質を的確に捉えた素晴らしい作品だと思いました。