実在する武器密売人の半生を描いた、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』を株券から銃に変えたような話。
片思いの女に対し偶然出会った風を装って周到に近づくというキモい役柄にニコラス・ケイジをキャスティングした時点で5億点。
「良心や罪悪感の異常な欠如」
「執着はするが愛情はない」
「口達者で表面上は魅力的」
→はい、サイコパス確定。
前半はスパイシーなブラックジョークの効いたコメディタッチで笑えるが、物語が進むにつれて「彼が人殺しの道具を売る本当の理由」が明らかとなり、そして「いま世界の戦場で起きている事実」についてシリアスに問題提起されていく。
この世から銃がなくなることはない。彼のような悪党もゲームの駒の1つでしかない。アンドリュー・ニコル監督(愛称にこるん)は一貫して「抗いがたいシステムによって管理された社会」について警鐘を鳴らしている。『悪の法則』である。
主人公の逮捕に執念を燃やすFBIを『ガタカ』のイーサン・ホークが好演しているが、通常この立ち位置だと憎まれ役になりそうなところ、あくまで法を重んじるフェアなキャラクターに好感が持てた。
むしろ主人公がサイコパスすぎて次第に共感できなくなっていくため、これを観ても誰も真似したくはならないだろう、という意味でとても健全な作品であった。