がんちゃん

キャッシュトラックのがんちゃんのレビュー・感想・評価

キャッシュトラック(2021年製作の映画)
3.5
映画では真っ先に殺される「現金輸送車の警備員」が主役のマイナーお仕事フォーカス型ムービー。「俺たちは獲物なんだよ」と愚痴りながらも他に職業選択の自由はない、そんな使い捨て職員たちの超ブラックな職場が前半で丁寧に描かれる。「(銃で脅されても)車の外に出てはいけない」なんて無理めな規則があって泣ける…蜂の巣になって横転するイメージしかない現金輸送車と警備員にも人生があるんだなぁと勉強になった。

そんなやられ役をジェイソン・ステイサムが演じたら?どうせ主人公は心に傷を負った元SASの軍人で「舐めてた相手が殺人マシーン」系のお話でしょう…と思いきや、彼の様子がどうもおかしい。「H」と名付けられた謎の主人公は果たして本当に「HERO」なのか?いつもと違うステイサムの行動にハラハラしつつ、ガイ・リッチーお家芸のタネ明かし演出が気持ちいい。

しかし、今回は完全シリアスに徹したために、ガイ×ステイサムのコンビなら誰もが期待したであろうスタイリシッシュな演出とコメディ要素が封印されてしまった点は残念。ステイサム主演作には『ハミングバード』なとシリアスなものがいくつかあるが、どれも消化不良な印象が否めない。ステイサム、もうハードボイルド路線は諦めてMARVELかDCにでも進出した方がいいのでは?

その代わり、本作最大の魅力は脇を固める個性的な俳優たちかもしれない。ヘタレのくせにHの活躍に奮起して「やってやんよ!」と銃を取る警備員たち。しかし、そう簡単に奇跡は起こせないあたりも含めて「やられ役」のワビサビを感じた。
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