ぴのした

サンタ・サングレ/聖なる血のぴのしたのレビュー・感想・評価

3.9
チリのカルト映画の巨匠、ホドロフスキーの三大作の1つ。

前に見た『エル・トポ』はむちゃくちゃなストーリーだったのに、なんだこれは、むっちゃいい映画じゃんか…!!

主人公フェニックスは、幼少期にサーカスを運営していた親同士の殺しあいを見て精神を病み、大人になるまで精神病院で暮らしていた。ある日正気を取り戻したフェニックスは両腕をなくした母親と一緒に暮らすようになるのだが、母親の催眠術のせいでフェニックスは自分に近づく女を自分の手で殺してしまうようになり…

ところどころ「なんやねんそれww」みたいなシーンが出てくるけど、ストーリー自体はかなりちゃんとしてる。オチが『サイコ』感あるけど。

先にこのホドロフスキー監督の半生を題材にした『リアリティのダンス』を見てたからか、なんとなくこの映画に込めたホドロフスキーの意図がわかってよかった。

『リアリティのダンス』でもホドロフスキーの父親はサーカスをしていて、主人公を男らしくするために痛みを強要する。母親は熱心な宗教家というのも同じかな。

両映画とも、サーカスは親の呪縛の象徴であり、同時に愉快な仲間と一緒にいれる心の落ち着く場でもある。これはリアリティのダンスともこの映画とも共通するところで、きっとホドロフスキーの永遠の命題なのかもしれない。

どうしても父親の真似をしてしまう呪縛、死んだ母親の言いつけに縛られる呪縛。女の子が手をフェニックスの刺青にかざして飛ばす仕草をするシーンがそれらの呪縛からの解放を象徴的に表していてとても良かった。ラストシーンで自分の手だと実感するのもなかなかにいい演出。

ようやくホドロフスキーの面白さが感性的のみならず、理性的にもわかってきた気がする。これくらい難しそうな映画を理解できた(した気になっただけかも)のはなかなか嬉しいな。次はホーリーマウンテンを見たい。