まっつん

ハッスル&フロウのまっつんのレビュー・感想・評価

ハッスル&フロウ(2005年製作の映画)
3.9
巷ではフリースタイルダンジョンなどの影響でHIPHOPブームが続いております。そんな中、HIPHOP版ロッキーとはこのことだ!と言わんばかりの傑作負け犬映画をレビュー。

本作の主人公は端的にクソ野郎です。ポン引きやドラッグディーラーとして生計を立て、3人の売春婦と生活していると。それならまだしもとにかく売春婦の娘たちとの付き合い方が下手くそというか、「なんでそんなことするん....」ってなるんですよね。でも、そんなクズでも這い上がることが出来る!と仲間たちと共にぶつかり合いながらも一発逆転を目指す話です。

と聞くとさぞ美しい話にも聞こえがちですが本作は夢を持つことの怖さも描いていて、それは「引っ込みが付かなくなっちゃう」ってとこですよね。夢を持つという一種の賭けを降りた段階でこれまでの全てが水泡に帰してしまうからです。みんなそれが怖くてやめどころが分からなくなってしまうんですよね。

その上本作が出す結論は非常に苦いものです。でも彼らがやったことは小さいながらもどこかでは誰かの心を掴んでいたというのがまた泣かせます。

個人的にグッときたのが売春婦の女性たちの描写で、特に自分の役割というものを探しているノラの描写には感服させられました。彼女はレコーディング中に換気扇を止めるというだけの簡単な役割しか与えられなかったにも関わらず、それが自分の居場所であるかのように楽しそうに振る舞うんですね。そして最終的に自分の最もやるべき事を見つけ、本作で言うと自分のモードを手に入れると。他の売春婦たちの人間描写もしっかりと描かれていて非常によくできてるなと思いました。

さらには音楽が出来上がっていく過程というのをしっかりと見せていく部分も良いところだなと思っていて、なるほど音楽を作る人たちはこの瞬間のためにやっているんだなというのが音楽を作ったことがない人にも伝わるように出来ているのが見事だなと感じました。