櫻子の勝手にシネマ

シェルブールの雨傘の櫻子の勝手にシネマのネタバレレビュー・内容・結末

シェルブールの雨傘(1963年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

フランスの大女優カトリーヌ・ドヌーヴの若く美しい姿も見れる傑作ミュージカル。
ミュージカルが苦手な私が唯一何度もリピートするくらい素晴らしい作品だ。
大人気作品『ラ・ラ・ランド』に大きな影響を与えた事でも有名。

1964年に公開されたフランス映画。
2017年にデジタルリマスター版が公開されている。
監督はジャック・ドゥミ、音楽はミシェル・ルグラン、主演カトリーヌ・ドヌーヴ。
私も大好きな『ロバと王女』や『ロシュフォールの恋人たち』のジャック・ドゥミとカトリーヌ・ドヌーヴの最強タッグとくれば間違いない。

自動車修理工の青年ギイと傘屋の娘ジュヌヴィエーヴは結婚を誓い合った恋人同士だが、徴兵礼状によって引き裂かれてしまい、2人の未来が大きく変わっていくラブストーリーだ。
全編、歌でセリフを続けると聞くと苦手意識が強くなる人も多いと思うけど、むしろダンス要素は皆無。その代わり他愛のない挨拶や相槌でさえメロディーに乗せるという徹底っぷり。
セリフが全て歌になっているので最初は違和感を感じたけれど、次第に物語の中にぐいぐい引き込まれていき、そのうちそれが当たり前になっていった。

カトリーヌ・ドヌーヴが本当に可愛くて美しくてまさに目の保養。
現代ではあまり見かけない傘屋も非常に魅力的だ。
ヘアメイクや衣裳だけでなくアクセサリーなどの小物類まで手抜きは一切無し。
細部まで計算された完璧なスタイルに敬服させられた。
さすがファッションの国、おフランス。
私は一生あなたについて行きます(笑)

恋人のギイが戦地に行ってしまう前の別れのシーンは何度観ても切ない。
情緒的なメロディーと相まって泣けてくる。

ラストのガソリンスタンドのシーンも号泣レベルだ。
二人は愛し合っていたけれど、それぞれ別の人と結婚し子供がいる。
とあるクリスマスイブの夕方、二人はギイが経営するガソリンスタンドで偶然再会する。
車を運転している女性が、かつての恋人ジュヌヴィエーヴだと気づくギイ。
彼女が車に乗せている女の子は紛れもなくギイとの間に出来た娘だったが、互いに多くの言葉は交わさない。
「あなたに似てるわ」とジュヌヴィエーヴ。「早く帰ったほうがいい」とギイ。
彼女は降りしきる雪の中を車で去って行き、ギイは何もなかったかのように買い物から帰ってきた妻と娘を迎え入れた。

愛し合っているのに叶わない恋の物語はたくさんあるけれど、その悲恋をただ悲しい物語として終わらせてしまうのではなく、それでも幸せな未来があると教えてくれる作品はあまり無いと思う。
そういう意味でもこの映画は素晴らしい。
オススメです。