emily

おっぱいとお月さまのemilyのレビュー・感想・評価

おっぱいとお月さま(1994年製作の映画)
3.8
 9歳の少年テテに弟が生まれ、ママのおっぱいを弟に奪われ自分のおっぱいを探すことにする。海辺でショーを行っているダンサーのおっぱいに恋をする。そのおっぱいを独り占めするべく行動を起こす・・・

 本作は少年テテのモノローグにより現実と幻想を交えたようなファンタジーと子供の視点から描かれる大人たちがリアルに描写されており、色彩も美しい。赤を基調としたインテリアと、月明かりを思わせる青い色彩の夜の大人の空気。カラフルなブラジャーが吊るされて干されている絵になるカットや、ぽろんぽろんとまるで物のように見せられる女性の胸の映像のギャップもまさに子供の視点ならではであり、終始テテに感情移入させられる。寄り添う音楽も心情を物語、事故のシーンではクルミを足でつぶすシーンからイメージを交差させていくのも面白い。

 テテの目線から見る滑稽な大人達、激しいセックスの描写もエロスを全く感じさせないただの運動として描写されており、ミルクからの卒業、すなわち大人へのステップの第一歩を子供の目線で描く事でユニークな発想が溶け合い、リアルとファンタジーを行きかい夢を含ませている。

 冒頭の人間タワーの映像には迫力がある。テテは怖くてうまくてっぺんに登れない。もちろんこのシーンは彼の成長を見せるために重要なシーンとなる。シンプルであるが、子供ながらのミルクの解釈には皮肉さえも感じさせ、子供が親から少し離れ一歩踏み出していく姿と交差させる。彼女に恋をしたわけではない。おっぱいに恋をしたのだ。自分では子供過ぎて彼女を愛することなどできない。それがわかったとき9歳の少年は少しだけ大人に成長するのだ。月は美しく照らしてくれ、真の姿に気づかせてくれる。
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